2019年の年頭にあたり島田眞路学長が挨拶
2019年1月4日(金)、im体育官网において(医学部キャンパス同時中継)、2019年の年頭にあたり、島田眞路学長が、役員?教職員を前に挨拶しました。
挨拶の中で島田学長は、「己亥(つちのとい)」にあたる今年は「植物が成長して整っている様子」「生命の力が閉じ込められている状態」であるとし、変化が激しく緊迫する国際情勢や天皇陛下譲位などを例に挙げ、不穏?不安定な要素をはらむ国内外の難局を力を合わせて乗り切り、新しい時代を切り拓こうと呼び掛けました。
また、「大村智記念学術館」開館をはじめ、教育?研究面、社会連携?地域貢献、医学部附属病院など、昨年取り組んだ各方面での事業等を振り返りながら、大学全体を取り巻く厳しい環境を述べた上で、「本学として必要な改革を着実に進めるなど、山積する諸問題を皆さんのご協力、ご助言をいただきながら、共に解決していきたい」と決意を語りました。
挨拶全文
明けましておめでとうございます。
新しい年を迎えて、皆様それぞれ決意を新たにされていることと思います。
今年は十干十二支によれば、己亥(つちのとい)の年です。〝己(つちのと)?とは、植物が成長して整っていることを意味し、〝亥(い)?は生命力が閉じ込められているさまを言うそうです。
確かに世界情勢を眺めてみますと、米中貿易戦争で互いに関税を引き上げ合うなど、激化することが予想されます。トランプ米大統領は中間選挙を終え、下院は民主党に負けたものの、上院は過半数を死守、3年目に入り再選を目指して頑張らなければならないところです。ところが就任以来、次々と自分で任命したティラーソン国務長官やマクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官など政府高官を罷免し、昨年末にはジム?マティス国防長官まで更迭してしまいました。政府中枢はポンペイオ国務長官やボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官など対中強硬派で固められた感があります。あらゆる輸入品の関税を引き上げただけでなく、中国を代表する5G(第5世代移動通信システム)を先導するハイテク企業であるファーウェイ社やZTE社を排除し、またカナダでファーウェイCFOを逮捕するなど不穏な空気が漂っています。我が国もファーウェイの排除には追従せざるを得ませんでしたが、中国の報復も懸念されます。関税問題は飛び火してくるかもしれません。
不穏といえば、韓国もレーダー照射、徴用工問題、従軍慰安婦など異様な反日政策をとっています。北朝鮮もミサイル開発を公然と続けていることが報道されており、これでは制裁を継続するしかありません。英国のEU離脱、ドイツやフランスをはじめとするヨーロッパ各国の右傾化や政府の不安定化、中東情勢なども不穏な空気の要因です。
我が国もこのような不安定な国際情勢からくる影響を受けるのは必然ではありますが、安倍政権が比較的安定しているのが救いかもしれません。
本年は、天皇陛下のご退位及び皇太子殿下のご即位が行われます。また、G20が日本で初めて大阪で開催され、スポーツ面ではラグビーワールドカップが開催されるなど、ビッグイベントが目白押しですが、これらを乗り切っていきたいものです。
さて、本学では昨年、大村智先生のノーベル賞受賞記念寄附金が3億7千万円以上も集まり、7月19日に大村智記念学術館が完成し、大村智先生?山中伸弥先生のノーベル賞受賞者同士による対談が実現し、無事成功裏に行われました。司会を務めた私にとっては昨年一番の出来事でした。
また、昨年末創設した海外留学生を支援する「甲府市ふるさと応援寄附金」も、初の試みにも関わらず、1千万円超も集まりました。皆様のご協力に感謝致します。
大学院では「統合応用生命科学専攻」を新設し、教育学研究科を教職大学院に一本化?拡充することも決まりました。懸念であったエネルギー分野における「卓越大学院」も、早稲田大学主導ですが無事採択されました。医学部では創立40周年記念事業が盛大に行われ、附属病院では医師臨床研修マッチングにおいて史上初めてフルマッチし、特定共同指導も無事乗り切りました。さらに新病棟Ⅱ期棟にも着工しました。
最も大切な本学への運営費交付金を含む本年度予算ですが、2年連続年越しで未だ本学へ明示されておりません。本年度は財務省主導でトータル1,000億円を機能強化として吸い上げられていますので、基盤経費は例年より不安定化しています。予算が前年末に決まらないのは極めて問題だと思います。私は以前から国立大学協会で、運営費交付金の件に関して「財務省と戦って引き上げるべき」と発言していますが、このところやっと会長でもある京都大学の山極総長が財務省と戦う姿勢を見せています。このまま実質上減少していけば、山中先生、大村先生、大隅先生、本庶先生のようなノーベル賞はもう望めなくなります。
国立大学は常に政府から改革を求められています。大学統合を含めたガバナンス改革や人事給与マネジメント改革、入試改革などがその例です。本学においても大学連携について検討中です。また、退職金付年俸制も取り入れていかなければなりません。
しかし、このガイドラインも昨年中に文部科学省から示されるはずでしたが、未だに明示されていません。問題山積ですが、皆さんと共に何とか解決していくつもりです。
昨年、学長任期について新年度から2年間延長を決めていただきましたので、精一杯努力していく所存です。皆様のご協力、ご助言を宜しくお願い申し上げまして、新年のご挨拶と致します。
2019年1月4日
国立大学法人 山梨大学
学長 島田 眞路