学長挨拶?式辞

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  • 【2023年3月23日】令和4年度卒業式式辞

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    •  本日、山梨大学の学部?専攻科?大学院の卒業式?修了式を迎えた1135名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。
       また、今まで皆さんを励まし、支えてくださったご家族の皆様方には、教職員?在学生一同を代表して、心からお祝いを申し上げますとともに、これまでの本学への厚いご支援に対し、心より御礼申し上げます。  また、ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り誠に有難うございます。

    •  im体育官网感染拡大により、学業や課外活動など学生生活に様々な支障が生じたことと思います。大学での学術研究活動は大きな制約を受け、友人との交流も制限され、休暇中も母国に帰れなかった留学生の方もいるでしょう。こうした状況の中、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、苦難を乗り越え、大きく成長されました。皆さんは今、この卒業式?学位記授与式という晴れの舞台で、学業を成し遂げたという達成感に包まれておられることと思います。

    •  さて、皆さんが在学中の国内外の出来事を振り返ってみますと、様々なことが起こっています。なかでも昨年2月24日に始まったロシアのウクライナの軍事的侵略は、許しがたい暴挙であります。圧倒的な軍事力の差から、ウクライナはロシアに屈するかと思いましたが、ゼレンスキー大統領の獅子奮迅のはたらきで、ロシア軍を押し返しました。キ―ウは守られましたが、今なお東部を中心に攻撃が激化しており、予断を許さない状況です。ウクライナ国民に対する残虐な映像が報道されるたび、心が痛みます。
       ヨーロッパNATO諸国やアメリカはウクライナを全面的に支援しており、昨年12月には、ゼレンスキー大統領は間隙をぬってワシントン訪問、今年2月にはバイデン大統領がキーウを電撃訪問し両大統領が会談、バイデン大統領が全面的に支援を約束しました。一日も早く、米国を含むヨーロッパのNATO諸国も一致団結してこの暴挙を止めていただきたいと祈っています。岸田首相が一昨日、3月21日にキーウに電撃訪問されましたが、このように日本も出来る範囲で積極的に関わるべきだと思います。
       本学としても大学としてできる支援を行っています。当初、方策がありませんでしたが、ハルキウの国立宇宙航空大学卒業、本学で博士号を取得し、本学の非常勤職員として働いておられるウクライナ出身のクセニア?フォミチョバさんを通じ、出身大学の副学長からウクライナの大学院生が授業を受けたいとの強い希望があることを知りました。
       ハルキウは激しい爆撃を受けていたことから、学びを諦めないウクライナの学生の心意気に感銘を受け、外国人学生のために用意しておりましたAIやクリーンエネルギーなど英語の授業カリキュラムをマッチングしたところ、550名もの希望がありました。最終的には22名の学生が完遂し、最後のe-ラーニングのテストにも合格しました。爆撃が日増しにひどくなっていたので、550人からはかなり減りましたが、それでも22名が修了し、7月には修了式をオンラインで行い、その場で学生さんからも喜びと感謝の言葉を頂いたことは心よりうれしく思っています。
       本学の支援を知った、首都キーウにあるボリス?グリチェンコ?キーウ大学から日本語専攻の学生を送りたいとの話があり、昨年10月に大学間交流協定を締結したところです。また、キーウからは医学生も避難してきており、医学部附属病院で研修を受けています。
       この戦争により世界各国で様々な影響が続いてします。ウクライナからの小麦などの穀物の輸送がストップしたため食糧不足が起こり、飢饉が拡大し、物価高騰も招いています。また、電力不足から電気料金の高騰を招いています。本学でも7億円の余分な出費を余儀なくされましたが、附属病院の30億円の収入増で補正予算を組むことができ、今年は何とか乗り切ることができました。

    •  im体育官网感染症については、本学附属病院も、ドライブスルーPCR検査、医療者の広域派遣、ワクチン接種、SHINGENシステムというICT健康観察システムを開発し、県との連携のもと医療強化型宿泊療養施設の管理?運営(約1万名)や自宅療養、ホームケア(約17万人)にまで応用しました。さらに発熱外来の開設等、様々な対応を行ってきました。しかし、昨年1月から感染拡大しているオミクロン株は、感染力、感染のしやすさが従来株より大きいが、重症化は少ないという特徴がありました。重症化が少ないことから、諸外国や我が国も経済活性化を重視し、水際対策緩和、全国旅行支援が行われ、人の動きが活発化し、年末から年始にかけて、コロナ以前の賑わいを取り戻したかのように見えました。同時に年末から第8波が到来しました。そして、医療施設では患者さんの激増により医療逼迫が起こりました。
       我々は、入院病床を増やしたり、発熱外来を県内ではいち早く開設して対応しました。また、パキロビッドという重症化抑制に有効な内服薬が使用されなかったので、研究会を開いて県内の医師が安心して使えるようにしました。
      この第八波は終息の気配をみせており、政府は3月14日からはマスクの自由化や5月8日から五類へと変更する予定です。5波の「デルタ株」のときのように平穏状態となってきていますが、いつオミクロン株のような新たな変異株が現れないとも限りませんので、この新型コロナ感染対策には、手洗い、アルコール消毒などの感染対策と換気や密を避けることが重要です。また、ワクチン接種の重要性も増しています。是非、ネット情報などに惑わされずに積極的に接種をお願いします。

    •  本学の活動を振り返ってみますと、まずは昨年、地域活性化人材育成事業SPARC(Supereminent Program for Activating Regional Collaboration)事業が採択されました。6年間で10億円の補助金です。これは2019年に全国初となる一般社団法人「大学アライアンスやまなし」を設立、2021年3月 「大学等連携推進法人」の認定を受けました。このことが内閣府、文部科学省などで極めて高く評価されたことによります。その他、国立大学経営改革促進事業補助金、ジュニアドクター育成自然塾、ドローンとAIを使用したDX推進データサイエンティスト人材育成プログラム、バイオメディカルデータサイエンス特別コース新設、高度生殖補助技術センター新設などがあります。これらの総額38億円の補助金も、本学が改革を推進する大学と文科省、内閣府から高く評価された結果と受け止めています。これらを引き続き発展させていかなくてはなりません。
       昨年、千葉工業大学と連携協定を結び、いくつかの共同研究も始まっています。私立大学との連携法人は、より困難を伴うものと思われますが、中村和彦次期学長には、ぜひこの流れを続けて行って欲しいものと思います。その他、施設としては、最新の医療に対応する施設整備や山梨県内唯一の特定機能病院として急性期医療の充実?先進医療への取り組みを加速させるため、病院再整備事業を行ってまいりました。第Ⅰ期棟が2016年12月、Ⅱ期棟が2020年9月に開院し、第Ⅲ期棟は今月3日に竣工式を終え、6月に開院予定です。
       医学部の学生憩いの場として、シミックホールが完成しました。隣接する池の鯉の数を増やし、せせらぎにはメダカの泳ぐ姿も見えるように整備しました。ミーティングやカンファレンスルームとしても頻繁に使用されていますし、いつ来ても学生が談笑している姿を見て、この施設が出来たことは、大変な意義があったものと確信しています。
       ワイン科学研究センターも新棟が完成しました。また、東京オフィスが田町から平河町に移りました。地下鉄永田町駅四番口から一分という便利な場所です。皆さんもぜひご利用ください。
       その他、嬉しい出来事としては、昨年、連携協定を結んだヴァンフォーレ甲府がサッカー天皇杯で優勝したことです。本学にも佐久間悟社長や、山本英臣選手、河田晃兵選手が来学され、一緒に感動を分かち合えたことは嬉しいことでした。サッカーといえば、ワールドカップで日本代表がドイツ、スペインに勝利したことは特筆すべきことでした。また、昨日、ワールドベースボールクラシックで日本が米国に1点差で逆転勝ちし、二刀流の天才大谷選手が9回に登場し、最後のバッターを三振にしとめたことには久々に大興奮しました。

    •  近年の社会変化は著しく、持続可能な開発目標「SDGs」、地方のポテンシャルを引き出し継続的な営みができる社会「地方創生」、 IoT やビッグデータ、人工知能等をはじめとする技術革新による新たな社会「Society 5.0」 の実現などに向けて、人材育成のポイントも変化?多様化しています。最近では、Chat GPTという進化型の革命的なAIが公表されたのには驚きました。マイクロソフトが開発しましたが、早速、Google、中国のバイドゥも参入し、競争の激化が予想されます。

    •  本日修了?卒業される皆さんには、今後、家庭、団体、県や国家など実社会の様々な領域に於いて周囲の要請に応えられるよう、学習努力を継続して頂きたいと思います。大学で得た知識や、先生、友人、海外の文化と人との出会いは人生の宝になります。また、コロナ禍の難局を経験したことも力となり、明るい未来が必ず開けるはずです。

    •  ところで、今年も卒業生の中に世界11か国から来られた65名の留学生がいます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、英語でメッセージを送ります。

    •  In conclusion, I would like to make a short address in English for the 68 international students who are attending today.
       International students graduating today – you have left your homeland far away, overcome the barriers of different languages, cultures and customs, and continued your studies at the University of Yamanashi.
       The spread of COVID-19 caused you to worry about your life in Japan, and at the same time, you were also worried about your home country.
       Despite these circumstances, you have overcome the hardships and have grown significantly through your daily academic studies. As proof of that, you were awarded a diploma today. I would like to express my deepest respect for your efforts so far.
       The knowledge and skills you learned in this beautiful Yamanashi with a close view of Mt. Fuji, the teachers and friends you met, and the foreign culture you experienced will be treasures remaining with you. Your experience of the difficult situation during the COVID-19 pandemic will also help you in future activities.
       The knowledge you’ve acquired in every aspect of your life will serve as your guide as you live out your dreams.
       Please make great use of all you learned here for the development of your home country.
       Please be a bridge of friendship between your home country and Japan.
       Graduation is not yet the end, in fact it is just the beginning of a brighter future.
       I wish you all the best.
    •  結びになりましたが、皆さんが自分の人生は自分でつくるという自覚を持って、地域のため、日本のため、そして世界のためにご活躍されることを心より祈念し、私の式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

    • 令和5年3月23日
      国立大学法人山梨大学
      学長  島 田 眞 路

  • 【2023年1月4日】令和5年度年頭挨拶

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    •  学長の島田でございます。皆様、明けましておめでとうございます。
       健やかに新しい年を迎えて、それぞれ決意を新たにされていることと思います。

    •  今年は、十干十二支(じっかんじゅうにし)によれば、「癸卯(みずのとう)」の年です。“癸(みずのと)”とは生命の終わりを意味するとともに、新たな生命が成長しようとしている状態を表していると言われています。十二支の「卯」には、草花が地面を覆っているような状態を意味します。
       このように「癸卯(みずのとう)」は これからの成長が期待される年とされ、また、「卯」は十二支の「うさぎ」のように跳ね上がる意味もあり、卯年は飛び出る年、飛躍する年とも言われます。中村和彦次期学長のもと山梨大学も大きく発展することを願っています。

    •  im体育官网感染症については、昨年の年頭挨拶でもかなりの時間を割いてお話しましたが、私どもの予測した通り、年初からオミクロン株の第6波に続いて第7波が猛威を振るいました。オミクロン株の特徴は、感染力、感染のしやすさが従来株より大きいが、重症化は少ないというものです。それに伴い、諸外国や我が国も経済活性化を重視し、水際対策緩和、全国旅行支援が行われ、人の動きが活発化しました。年末から年始にかけて、テレビ報道を見ていますと至る所でコロナ以前の賑わいを取り戻したかのように見えました。しかし、年末から第8波が到来しました。
       医療施設では患者さんの激増により医療逼迫が起こっています。今回の特徴は、医療従事者の感染増により、入院制限、手術制限など余儀なくされています。また、本学でも学生を中心にクラスターが次々と発生しています。  学生にPCR検査を行うと、ほぼ100%陽性です。また、インフルエンザも今年は流行の兆しが見えてきました。新型コロナ感染については「なめたらやられる」と私が、以前から主張してきた通りの経過をたどっています。また、政府/マスコミは、感染抑制対策よりも、通常の生活に戻すことを優先しており、医療従事者の危機感とのミスマッチが起こっています。

    •  初詣の<密>の様子を見ていると更なる感染爆発と、更なる医療逼迫が懸念されます。この新型コロナ感染対策には、手洗い、アルコール消毒などの感染対策と換気や密を避けることが重要です。また、ワクチン接種の重要性も増しています。本学では、職域接種などを通じてこの2年間ワクチン接種に多大な貢献をしてきましたが、3回目以降、4回目、5回目のワクチン接種が遅れています。特に、オミクロン株対応のワクチンもBA.1に対するもの、さらにBA.4/5に対するワクチンも接種可能です。  国全体でも本学もワクチン接種が遅れています。是非、ネット情報などに惑わされずに積極的に接種をお願いします。
       我々が一昨年独自に開発したSHINGEN(Smart Health INformation Gathering & Evaluation Network)システムは、非常に活躍しており、3ヵ所の医療強化型宿泊療養施設に導入し、計1万名の患者さんのケアを行うことが出来ましたまた、このシステムが自宅療養、ホームケアにまで応用され、8万人以上の患者さんの自宅での療養に使われました。患者さんの重症化が一目で医療従事者にわかる画期的なシステムで、県民の方々のお役に立ったものと確信しています。現在、真只中にある第8波でもこのシステムが活躍していますが、これだけ患者さんが激増すると重症化率が低いとはいえ、重症患者さんの実数は増加します。オミクロン株の特徴ですが、コロナによる肺炎は重症化しなくても心肺疾患や糖尿病などの持病が悪化して不幸な転帰をとることも多くなっています。  患者さんの激増に対応して我々はいち早く発熱外来を昨年11月末に立ち上げました。後遺症も問題となっていますが、井上修特任教授を中心に、専門外来を開設、多数の患者さんを治療しています。

    •  治療薬の開発は喫緊の課題でしたが、日本はパキロビッドという90%重症化を抑える内服薬が200万人分、1年前から用意してありましたが、5万人分しか使われていません。ラゲブリオという重症化を30%抑える薬は160万人分用意しましたが、60万人分しか使われておりません。これらの効果のはっきりしている薬をもっと使えるようにするのは国の責務です。欧米では、普通の薬局でも処方される薬が使えないのは国の怠慢です。
       塩野義製薬のゾコーバという内服薬は昨年11月22日、3回目の審議でやっと通りましたが、実は効果ははっきりしません。国際共同治験で症状が消えるのが24時間早くなるというのですが、日本人では5~6時間しか短くなりませんし、また、重症化を抑える効果は不明です。承認された理由が、重症化しない人にも使えるというのですが、重症化しないことが分かっている人には市販の風邪薬で十分です。私が委員として、承認に反対したのですが、賛成多数という事で承認されました。国の新型コロナ感染対策は当初からチグハグで司令塔がはっきりせず、安倍、菅政権では頻繁に出ていた感染症対策の専門家と称する人々がマスコミに登場しなくなってしまいました。政府方針などの情報が伝わりにくくなっております。

    •  さて、恒例の世界情勢分析ですが、昨今の最大の出来事はロシアのウクライナ侵略です。昨年2月24日、北京オリンピックの終盤、突如ロシアがウクライナ首都キ-ウに向かって集結させていた戦車群をウクライナ国境を越えて南下させました。同時にキ-ウその他の主要都市に爆撃が行われました。圧倒的な軍事力の差から、ウクライナ危うしと思いましたが、ゼレンスキー大統領の獅子奮迅のはたらきで、ロシア軍を押し返しました。キ―ウは守られましたが、東部ドンバス地方や南部は、一進一退の戦闘が行われており、予断を許さない状況です。ヨーロッパNATO諸国やアメリカはウクライナを全面的に支援しています。
       先月、ゼレンスキー大統領は間隙をぬってワシントン訪問を果たし、バイデン大統領と会談、バイデン大統領が全面的に支援を約束しました。プーチン大統領は、戦争を始めた理由はこれ以上ヨーロッパにおけるNATO拡大は許さないというもので、ウクライナのNATO加盟の動きを封じ込めるというものですが、このような理由で現在の世界であからさまな侵略戦争が起きるとは本当に驚きでした。プーチン大統領はやや劣勢に立つと核使用をほのめかし、ウクライナだけでなく、全世界を脅しています。また、この戦争でヨーロッパ、米国はすぐさまウクライナ支援を表明したのですが、中国などは中立の立場を維持しています。中国はひとつの中国ということで台湾侵攻をほのめかしているので不気味です。
       こうなると日本は大丈夫か?ということになります。日本は領土問題ではロシアとは北方領土、中国とは尖閣諸島をめぐって、また、北朝鮮は核開発と同時に種々のミサイルを多数日本近海に打ち込んでいます。元日にも打ちました。この3カ国は核保有国です。また、独裁色の強い国でもあります。いつ日本がウクライナと同じ状況になるか分かりません。日本の防衛能力を抜本的に向上させることが求められています。

    •  ウクライナに戻りますが、山梨大学としてもウクライナ支援を考えていましたが、当初、方策がありませんでした。本学にはウクライナ出身のクセニア?フォミチョバさんというハルキウの国立宇宙航空大学卒業、本学で博士号を取得し、非常勤職員として働いている女性がいます。彼女がメディアに出られていたことから連絡をとったところ、出身大学の副学長からウクライナの大学院生が授業を受けたいとの強い希望があることが分かりました。ハルキウは激しい爆撃を受けていたことから、とてもそのような余裕はないものと思っていましたが、実はかなりの数にのぼることがわかりました。学びを諦めないウクライナの学生の心意気に感銘を受けました。山梨大学も塙雅典教授、茅暁陽教授、クリーンエネルギー研究センターなどで、外国人学生のために英語の授業カリキュラムをいくつか用意していたので、マッチングしたところ、AI/コンピュータサイエンスの授業が人気で受講希望が多いことが分かり、早速、募集したところ、はじめは数10人でしたが、550名もの希望がありました。そこでオンライン授業をオンデマンドで提供したところ、22名の学生が完遂し、最後のe-ラーニングのテストにも合格しました。爆撃が日増しにひどくなっていたので、550人からはかなり減りましたが、それでも22名が修了し、7月には修了式をオンラインで行うことができ、その場で学生さんからも喜びと感謝の言葉を直接、頂いたことは本当に良かったと思っています。
       これを聞きつけて、首都キーウにあるボリス?グリチェンコ?キーウ大学から日本語専攻の学生を送りたいとの話があり、先日、大学間交流協定を締結したところです。  キーウからは医学生も避難してきており、医学部附属病院で研修を受けています。ウクライナの学生のため、少しでも支援できることを喜んでいます。この間の山梨大学のウクライナ支援はTIME誌にも掲載されました。ただ、この戦争により、ウクライナからの小麦などの穀物の輸送がストップしたため、世界での食糧不足が起こり、飢饉が拡大し、物価高騰も招いています。また、電力不足から電気料金の高騰を招いています。本学でも7億円の余分な出費を余儀なくされましたが、後に述べる附属病院の30億円の収入増で補正予算を組むことができ、今年は何とか乗り切ることができました。

    •  医学部附属病院では、榎本信幸病院長の献身的努力による大胆な改革により、病院の収益が増加し、30億円の増収となりました。これにより、大学全体の危機でもあっGHP、R22という1年以内で寿命がくる冷暖房設備の入れ替えが可能となりました。11億円必要と聞かされた時は、絶望感に襲われましたが、病院収入のおかげで危機を免れました。また、この30億円により、病院の電子カルテシステムの高度化、前例をみないレベルへのアップグレードなども可能となりました。また、病院職員の新型コロナ治療に対する臨時手当、1億5千万円も措置することができました。この30億円は新型コロナ診療に対する国、県の補助金もありました。色々なご批判がありますが、本学が他大学に比べ、2020年の新型コロナ感染当初、ダイヤモンドプリンセス号患者さんの受け入れの時から、病院をあげて新型コロナ対策を最高水準で行ってきたので、多額の補助金を頂いたものと考えています。
       支出面では、森琢磨特命課長率いる市場調査チームが経費削減に取り組んでいます。病院関連の理不尽な高額の出費は相当抑えられています。この6年間に少なく見積もって、30億円以上の削減にあたります。この成果により病院の収入増も相まって、本学もウクライナ危機も乗り越えて、十分な投資をしてもなんとか赤字を出さずに生き残ることができています。

    •  その他、本学でのこの1年を振り返ってみますと、まずは地域活性化人材育成事業SPARC(Supereminent Program for Activating Regional Collaboration)事業ですが、無事採択されました。6年間で10億円の補助金です。これは大学等連携推進法人を全国に先駆けて、清水一彦前理事長?学長が率いていた山梨県立大学と設立、これが成功したことが文部科学省などで極めて高く評価されたことによります。一昨年、全国の指定国立大学を除く83法人中、唯一特筆すべき事例と評価されました。今に至るまで、全国のどの大学も同様の法人設立に成功していませんが、いかに国立大学と県立大学のコラボレーションが難しいかを示しています。
       その他、国立大学経営改革促進事業補助金、ジュニアドクター育成自然塾、ドローンとAIを使用したDX推進データサイエンティスト人材育成プログラム、バイオメディカルデータサイエンス特別コース新設、高度生殖補助技術センター新設などがあります。これらの総額数億円レベルの補助金も、本学が改革を推進する大学と文科省、内閣府から高く評価された結果と受け止めています。これらを引き続き発展させていかなくてはなりません。
       昨年、千葉工業大学と連携協定を結び、いくつかの共同研究も始まっています。私立大学との連携法人は、より困難を伴うものと思われますが、このまま流れを続けて行って欲しいものと思います。

    •  その他、施設等としては、医学部の学生憩いの場として、シミックホールが完成しました。ミーティングやカンファレンスルームとしても頻繁に使用されていますし、いつ来ても学生が談笑している姿を見て、この施設が出来たことは、大変な意義があったものと確信しています。
       ワイン科学研究センターも新棟が完成しました。また、東京オフィスが田町から平河町に移りました。塚本レイ子前理事のおはからいで、平河町塩崎ビル内に開設しました。地下鉄永田町駅4番口から1分という便利な場所です。皆さんも、是非もっとご利用いただきたいと思っています。
       その他、嬉しい出来事としては、昨年、連携協定を結んだヴァンフォーレ甲府がサッカー天皇杯で優勝したことです。本学にも佐久間悟社長や、山本英臣選手、河田晃兵選手が来学され、一緒に感動を分かち合えたことは嬉しいことでした。サッカーといえば、ワールドカップで日本代表がドイツ、スペインに勝利したことは特筆すべきことでした。

    •  近年の社会変化は著しく、持続可能な開発目標「SDGs」、地方のポテンシャルを引き出し継続的な営みができる社会「地方創生」、 IoT やビッグデータ、人工知能等をはじめとする技術革新による新たな社会「Society 5.0」 の実現などに向けて、人材育成のポイントも変化?多様化しています。最近では、Chat GPTという進化型の革命的なAIが公表されたのには驚きました。マイクロソフトが開発しましたが、早速、Google、中国のバイドゥも参入し、競争の激化が予想されます。

    •  また、im体育官网の流行や豪雨や猛暑などの自然災害が引き起こす地球温暖化、少子高齢化などの深刻な問題、国境を越えての人間の安全保障を脅かす喫緊の課題など、予測が困難な事象が次々と起こっています。このような「先行きが不透明で、将来の予測が困難なVUCAの時代」を乗り切るために、多様な場で活躍できる人材、柔軟な考えや臨機応変な行動、そして学びの継続が必要です。
       本日修了?卒業される皆さんには、今後、家庭、団体、県や国家など実社会の様々な領域に於いて周囲の要請に応えられるよう、学習努力を継続して頂きたいと思います。大学で得た知識や、先生、友人、海外の文化と人との出会いは人生の宝になります。また、コロナ禍の難局を経験したことも力となり、明るい未来が必ず開けるはずです。地域で、日本で、そして世界でご活躍されることを心より祈念します。
       我々山梨大学も、皆さんの母校としていつでも適切な支援と生涯学習の場を提供できるよう、教職員一同力を合わせて進んでいきたいと思っています。ところで、今年も卒業生の中に世界七か国から来られた六十八名の留学生がおられます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、英語でメッセージを送ります。

    •  最後になりますが、この新しい年がより充実した有意義な年になるよう心より祈念致しまして、私からの最後の年頭挨拶とさせていただきます。
       本年もどうぞ宜しくお願い致します。

    • 令和5年1月4日
      国立大学法人山梨大学
      学長  島 田 眞 路

  • 【2022年4月6日】令和4年度入学式式辞

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    •  学長の島田眞路です。全国各地そして海外から、山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,227名の新入生の皆さん、本日はご入学誠におめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同を代表して、心より歓迎いたします。また、これまで皆さんを支えてこられましたご家族の皆様方に心からお祝い申し上げます。
       昨年、一昨年はim体育官网感染拡大のため、新入生及び保護者の皆様が一同に集まっての入学式は行わなかったのですが、本年は感染防止対策をとりつつ、入学式の参加を新入生のみに制限しての開催といたしました。大変な受験の時期をずっと見守り、支え励ましてこられたご家族の皆様のご出席がかなわない状況で式を執り行うことは、とても残念ですが、ライブ配信で式をご覧の皆様と共に、入学をお祝いしたいと思います。

    •  ここで本学山梨大学について少しご紹介したいと思います。
       山梨大学は、遠く江戸時代までさかのぼる1796年に設けられた幕府の学問所 昌平黌の分館「徽典館」に始まり、200年以上の歴史がある大学です。2002年には国が設立する最後の国立医科大学として開学した旧山梨医科大学と統合し、改組を断続的に行い、現在の4学部、教育学部、工学部、生命環境学部、医学部となりました。大学院も2016年4月の改組により医学?工学?農学等が融合した「大学院医工農学総合教育部」が開設され、以前にもまして幅広く、より体系的で充実した教育研究を行うことが出来るようになりました。そして、全国に先駆けた様々な改革を実施しております。

    •  2020年4月に、本学は文部科学省から「数理?データサイエンス?AI教育の全国展開」の協力校として選定され、全ての学部新入生を対象に、数理?データサイエンス?AI教育を必修とするなどのカリキュラム改革を行い文理を問わず反転授業も取り入れ、全学態勢で新たな教育を進めています。
       また、同年には公立の山梨県立大学と連携、全国初となる一般社団法人「大学アライアンスやまなし」を設立、昨年“大学等連携推進法人”の認定を受けました。どちらの大学でも学び単位が取得できる連携開設科目を53科目開設、今年度は132科目に増やしました。更に地域人材養成センター、山梨県幼児教育センターも立ち上げました。これらが文部科学省から高く評価され、昨年度、全国立大学中、特筆すべき事例として、唯一、NO.1の業績と評価されたところです。
       これに伴い、本学は「改革を推進する大学」として認識され、数々の大型の補助金を獲得することができました。国の科学技術振興機構(JST)関連事業では5件採択されました。中でも本学を代表する水素/燃料電池分野では精密機器の設計?構造分野で技術力の高い日邦プレシジョン株式会社との共同研究で、燃料電池自転車が完成し、長崎知事とご一緒に試乗式を行ったことは楽しい思い出です。近年自転車の人気はめざましく、「サイクル王国やまなし」の実現を目指し、各種関連企業との協力も進んでおり、一般社団法人も立ち上げました。
       山梨県も甲府市の南に位置する米倉山で太陽光発電から水素を生産し、乗り物だけでなく建物内でも燃料電池を駆動させるCO2フリー、カーボンニュートラルな社会を創ることを目標にしています。本学の世界最先端の燃料電池研究がこれとマッチして、貢献できればと願っています。

    •  教育?研究?社会貢献においても、本学は、「地域の中核、世界の人材」をキャッチフレーズに構成員が一丸となって協働し、取り組んでおります。
       まず、研究面では燃料電池ナノ材料研究センターやクリーンエネルギー研究センターが水素?燃料電池研究で世界をリードしています。発生工学研究センターでは、先端的ライフサイエンス研究を推進し、マイクロマニュピュレーター(微生物や動植物細胞などに直接接触して処理する装置)を使ってクローンの作出や宇宙移植など世界初の実験を行っています。
       また、果実酒を専門に研究する唯一の国立研究機関として1947年に設置された発酵研究所は、現在、ワイン科学研究センターとなり、ワイン研究や人材育成で大きな成果を上げ、日本のワイン研究?教育の代表として世界で活躍しています。 また、昨年度は、最先端の脳科学研究の推進と新たな教育の展開を図るため、医学部を中心に山梨GLIAセンターを新たに設置しました。早速、慢性の痛みのメカニズムの解明など、世界的な研究成果を上げています。
       次に、教育面では、医学部において、独自に一年生から高度な研究に参加できる研究医養成プログラム「ライフサイエンスコース」を用意しています。この伝統あるコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。また、工学部では「未来世代を思いやるエンジニアリング教育」をキャッチフレーズに掲げて反転授業やアクティブ?ラーニングをいち早く取り入れ、大きな成果を上げております。生命環境学部には「ワイン科学特別コース」、「観光政策科学特別コース」が設置されており、全国的に見ても特色のある課程となっています。
       そして、本年度から医学部と生命環境学部の連携による脳?免疫学分野の学部レベルの融合教育プログラム「バイオ?メディカルデータサイエンス特別コース」が新設され、教育の充実を図ります。

    •  医学部附属病院は、山梨県唯一の特定機能病院として“すべての患者さんに「安心」を”というキャッチフレーズで、高度で安全な医療を堅持し提供しています。我が国で最高の性能を誇る3テスラの高磁場MRI装置搭載脳神経外科用手術室、TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)という高度な心臓手術が行える本格的なハイブリッド手術室システム、2台の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者さんのニーズに応えた新病棟Ⅰ期棟やⅡ期棟が稼働しています。

    •  一方で、山梨県の病院の代表として、現在、im体育官网感染症対策に全力を挙げて取り組んでいます。昨年3月にはいち早くワクチン接種を開始し、医療従事者、学生、教職員、県内の大学生、高校生、企業等、延べ約12万回接種をいたしました。90%以上の学生が接種を受けたので、対面授業もいち早く安心、安全の形で行うことができました。昨年4月~6 月及び本年1月には文部科学省からの派遣要請に応え、大阪と沖縄に看護師計15名を派遣、8月には県の要請を受けて富士河口湖、中央市そして本年1月からは甲府市の医療強化型宿泊療養施設を運営しています。既に延べ5200名以上を受け入れました。また、大学が独自に開発したSHINGENシステムをホテルだけでなく退所後ケア、ホームケアやファーストケア対象者にも利用するなど、山梨県内のすべての患者さんを病院内と同様に管理しています。SHINGENシステムとは、患者さんが自身のスマホでQRコードを読み取るとシステム内に入り、発熱や呼吸状態など症状を入力することができます。その情報を24時間体制で、医師、看護師が一括管理するシステムで、患者さんには自宅にいても放置されることがありません。教職員一丸となって地域医療を支えてきたこれらの取り組みが山梨県から高く評価され、昨年11月25日《県政特別功績》という県の最高賞も受賞いたしました。

    •  山梨県は、南方に世界文化遺産の富士山、北方に八ヶ岳、西方に南アルプス連峰を望む風光明媚な地であります。厚生労働省の調査では、自立して日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、令和3年度の発表で男女ともに全国第二位、最新の都道府県別移住希望地調査でも3位にランキングしています。また、ぶとう、すもも、ももの収穫量、ミネラルウォーター出荷量、貴金属?宝飾品製造事業者数、ワイナリー数、日本ワイン生産量そして日照時間も日本一です。
       山梨県が誇る武田信玄公の生誕500年を記念して、甲府市においても様々なイベントが企画?実施されました。毎年4月に行われる信玄公祭りでは甲州軍団出陣があり、im体育官网のある武田通りをパレードします。本年も信玄公生誕500年に関わるイベントが企画され、秋には信玄公祭り「甲州軍団出陣」が予定されていますので、山梨県の歴史に触れていただければと思います。
       中部横断自動車道の山梨県~静岡県の全線が昨年に開通し、物流?輸送の効率化、企業の立地、雇用の促進の拡大と人口の増加による地域の活性化が期待されています。更に、2027年にはリニア中央新幹線の東京~名古屋間が開通予定であり、東京から甲府までは約25分とアクセスが向上し、経済や産業の発展、人材や文化の融合などによって、新たなイノベーションの創出、地域の活性化が大いに期待されています

    •  皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で学ぶことになります。生活環境が大きく変わり、不安もあるかと思いますが、学びを主体に充実した学生生活が送れるよう、学生サポートセンターを中心に、様々な相談?支援体制を整えていますので、気軽に相談していただければと思います。
       皆さんには大学での学びを通じて、専門知識?技能を獲得するだけにとどまらず、「自ら学び、自ら考える力」を身に着けてほしいと願っています。また、目標も考え方も異なる他学部の学生とも積極的に交流を深め、心を開いて語り合える友人をたくさん作って下さい。読書?スポーツ?旅行?芸術鑑賞?留学など沢山の経験をして下さい。広い知識と教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。

    •  さて、世界に目を向けますとウクライナ各地での無差別爆撃やジェノサイドの様子が報道され、心を痛める日々が続いております。 大学も例外ではなく、インフラも破壊され、通常の講義も不可能となっています。そのような戦火に追われる状況にありながら工学系先端技術に関する講義をぜひ聞きたいというウクライナの学生達からの強い希望があるという話を伺い、心を打たれ全力で支援することとしました。先ずは、ウクライナ東部の都市、ハルキウ(ハリコフ)の学生に、先端技術や環境などに関する13科目の授業をオンデマンドで配信します。早速36名の学生が登録いたしました。このような取組が全国の大学に広がり、さらに講義内容が発展、充実し、ウクライナの学生達への支援となることを心より願っています。

    •  今年も学部や大学院に世界14カ所の国と地域から48名の留学生を迎えます。留学生の皆さんのために、ここから少し英語でメッセージを贈ります。

    •  To all of our international students: we would like to welcome you to Yamanashi. You have come from all over the world, including Bangladesh, Brazil, BurkinaFaso, China, Ethiopia, Germany, Madagascar, Malaysia, Philippines, Republic of Korea, South Sudan, Thailand, Viet Nam and Taiwan.
       It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       COVID-19 pandemic has spread all over the world, and the situation is still unpredictable. We must all cooperate on a global scale to overcome this crisis.
       We will endeavor to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
       We hope that your stay at our university will be a successful one.
       Thank you.
    •  結びになりますが、ご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂くとともに本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       入学生の皆さんとご家族の皆様に、改めて心からのお祝いを申し上げ、わたくしからの式辞といたします。
       ご入学、誠におめでとうございます。

    • 令和4年4月6日
      国立大学法人山梨大学
      学長  島 田 眞 路

  • 【2022年1月4日】令和4年年頭挨拶

    •  

    •  学長の島田でございます。皆様、明けましておめでとうございます。健やかに新しい年を迎えて、それぞれ決意を新たにされていることと思います。

       今年は、十干十二支(じっかんじゅうにし)によれば、「壬寅(みずのえ とら)」の年です。“壬(みずのえ)”とはゆったりと曲がりながら流れる大河の水を表し、“寅(とら)”は、決断力と才知を意味するそうです。
       また、「壬寅(みずのえ とら)」は「新しく立ち上がること」「生まれたものが成長すること」を表しているそうです。本学もこれにあやかりたいものです。

       さて、2021年を振り返ってみますと、新型コロナに明け、新型コロナに暮れ、コロナに振り回された1年でした。先ずは、本学の新型コロナ対応についてお話ししておきたいと思います。少し長くなりますがお許しください。

       昨年は第3波の真只中で新年を迎えたわけですが、春先、これがやっと終息したかと思いきや、第4波が大阪、兵庫を中心に拡大し、大阪では死者数が東京を上回り、沖縄も大変な状況となりました。文科省審議官から直接電話依頼があり、大阪へは計12名、沖縄へは2名の高度なスキルを持つ優秀なナースを派遣しました。
       7月に東京2020オリンピック?パラリンピックの無観客での開催が実施されました。日本人選手の大活躍はめざましく、国民も大喜びでしたが、新型コロナデルタ株は同時に最も大きな第5波として感染爆発が起こり、医療逼迫となり、自宅で亡くなる方も増え、大変な状況となりました。
       一方、ワクチン接種はファイザー製mRNAワクチンを用いて、本学では3月9日から医療従事者から始めました。私も第1号として接種しました。6月22日からはモデルナ製を用いて職域接種をいち早く開始しました。大学アライアンスやまなしの県立大学とも協力し、県内大学だけでなく、専門学校生、障害者施設、機械電子工業会、甲府商工会議所、トラック協会、旅館ホテル生活衛生同業組合、ヴァンフォーレ甲府など多数の団体にも拡大しました。又、高校生ついては、先ず、受験を控える県内高校3年生に、次いで高校1,2年生にまで順次拡大して高校生全体に拡げました。12月までには《計10万回接種を達成》したところです。大学アライアンスやまなしとしての初めての共同作業が成功いたしました。
       9月には本学学生?教職員の接種率は90%を越え、10月初めから対面授業を安心、安全に開始できました。ワクチン接種については、中村和彦理事をトップとして附属病院医師、ナース、事務方など全学を挙げて行いました。(特に野中昭彦医学域事務部長、石井よしみ総務課長、土屋豊医学域総務課長の活躍はめざましかったと思います。)

       第5波における山梨県の感染対策としては、医療機能強化型ホテル運営があります。長崎幸太郎知事の音頭で東横INN富士河口湖大橋で始まりましたが、我々も積極的に関わりました。初めは紙ベース、電話対応で患者管理がされていましたが、我々が関与してからICTを用いて患者管理を行うSHINGENシステム(Smart Health INformation Gathering & Evaluation Network)を開発、これはシステム企画室の道村和弘室長を中心に山中章平医学域総務課人事GL、森琢磨特命課長チームが活躍しましたが、患者さんのスマホでQRコードを読み取って、発熱、酸素飽和濃度などを自分で入力するシステムで、患者さんと医療サイドのコミュニケーションが大幅に改善し、患者さんのQOLを高めることができました。
       また、抗体カクテル療法もいち早く取り入れ、91名の患者さんに投与し、重症化を防ぐことができました。これが評価されて、2軒目のホテル、ルートイン山梨中央の運営をはじめから任されることになり、2軒のホテルを同時に運営することになりました。

       これらの取り組みが山梨県から高く評価され、11月25日《県政特別功績》という県の最高賞を受賞できました。井上修特任教授と山梨大学DMAT隊も県政功績を受賞しました。これも榎本信幸病院長をはじめ、井上修特任教授、窪川佳世看護師長など感染制御チーム、救急/ICUや呼吸器内科のスタッフ、ホテルの経営責任者を引き受けてくれた森口武史教授、針井則一特任准教授や中込大樹病院准教授などのおかげです。
       入院の方は延べ176名受け入れてきました。最重症の患者さんにも森口教授を中心にエクモを用いて、同時に3名治療したこともあります。通常の患者さんが減少したため、一昨年に引き続き赤字が懸念されましたが、榎本病院長を中心に経営改善を抜本的に行って、黒字を達成しました。

       これらの第5波を乗り越え、ほっとしたところに11月末、南アフリカでオミクロン株が出現、12月暮れまでにヨーロッパ、アメリカで1日数10万人以上感染者が出て感染大爆発を引き起こしました。ワクチン2回接種しても簡単にブレークスルーすることがわかってきました。幸い、重症化率はデルタ株より低いようですが、数が多いと医療逼迫度は第5波と同程度あるいはそれ以上の可能性もあり、最大限の警戒が必要です。1月3日(月)時点、東京で103人、沖縄では130人の感染者が出ています。デルタ株かオミクロン株かは同定されていませんが、早々オミクロン株に変わることでしょう。そのため、3回目のワクチンが必須となっています。本学では12月1日から医療従事者から開始していますが、政府には可及的速やかにワクチンの確保、配給をお願いしたいところです。

       新型コロナ以外での昨年のim体育官网は、大学アライアンスやまなしが昨年3月末、文科省大臣から大学等連携推進法人として初認定されたことです。まずは、連携開設科目53科目を開設しました。地域人材養成センター、山梨県幼児教育センターも立ち上がりました。これは文科省から高く評価され、昨年12月に国立大学法人評価委員会から業務運営部門で全国立大学中、特筆すべき事例として、唯一、NO.1の業績と評価されました。

       これに伴い、本学は「改革を推進する大学」として認識され、数々の大型の補助金を獲得することができました。JST関連でも5件獲得することができました。水素/燃料電池でもFCyFINE(Fuel Cells-Yamanashi Frontier for Innovation and Ecosystem)事業の最終年でしたが社会実装第1段として日邦プレシジョンとの共同研究で、燃料電池自転車が完成しました。長崎知事とご一緒に試乗式を行ったことは楽しい思い出です。近年自転車の人気はめざましく、各種関連企業との協力も進んでいます。

       山梨県も米倉山で太陽光発電で水素を生産し、乗り物だけでなく建物内でも燃料電池を駆動させるCO2フリー、カーボンニュートラルな社会を創ることを目標にしています。本学の世界最先端の燃料電池研究がこれとマッチして、貢献できればと願っています。その意味で、昨年、内田誠、宮武健治、犬飼潤治の3教授が文科省大臣表彰を受賞されたこと、飯山明裕燃料電池ナノ材料研究センター長が山梨科学アカデミーで特別講演をされたこと、駐日ドイツ大使がドイツの大学との共同研究推進のためわざわざ本学を訪問されたこと、さらに本学が中心となって、一般社団法人FCyFINEプラスを発足したことは特筆すべきことと考えます。

       研究組織としては、医学部を中心とした世界最先端研究をめざすグリアセンターの設置、胚培養士を育成することで少子化対策にも貢献する高度生殖補助技術センター、データサイエンスを駆使した生命科学研究を行う専門職業人育成のためのバイオメディカルデータサイエンス特別コースの設立、女性研究者育成のためのダイバーシティ研究環境実現イニシアティブなどが大いに期待されるところです。
       また、長年の懸案事項で文科省からも厳しい指摘を受けてきた工学部の抜本的な改革(1学部1学科をめざすもの)にも真剣に取り組みたいと考えています。

       ワイン関連では甲府ロゼスパークリングワインが柳田藤寿教授を中心に、新たに開発されました。また、山梨大学のワイン、鹿児島大学の焼酎、新潟大学の日本酒を専門とする3大学センター連携協定も将来期待されるものと思います。

       教育関連では第3期中目中計の中核であった大学院特別教育プログラムのシンポジウムが暮れに開催されましたが、各プログラムの卒業生たちのプレゼン力には感銘を受けました。

       最後に《経費削減》です。現在、文科省などから最も注目されているのが、市場調査チームによる経費削減です。
       令和元年度1億5千万円、2年度5億9千万円、3年度は半期で、4億5千万円もの経費削減が達成されました。特に病院医療機器分野での過剰な支出が習慣的に漫然と容認されてきましたが、森特命課長率いる市場調査チームにより徹底的に見直すことで、大きな削減が可能となりました。また、種々の機会でレクチャーが行われ、多くの職員にそのコンセプトが徐々に浸透してきたものと思います。

       もうひとつの対象は施設部関連です。
       施設部関係の経費もある種、聖域となってきました。施設部、コンサル会社、工事請負会社との関係を整理してリーズナブルな運営を行いたいと考えています。昨年、明らかとなったガスヒートポンプ、R22EHP問題は、喫緊の問題で文教施設部を暮れに訪問してきましたが、文科省とも連携をとって早急に対策を打っていきたいと考えています。

       来年度はいよいよ国立大学法人第4期がスタートします。SDGsを本格的に取り入れた本学の更なる発展をめざします。
       私も最初のこの1年、さらに気を引き締めて粉骨砕身努力するつもりですので、ご協力の程、よろしくお願い致します。

    • 令和4年1月4日
      山梨大学 学長 島田 眞路

  • 【2021年10月1日】令和3年度秋季入学式式辞

    •  im体育官网感染症(COVID-19)が世界中に広がり、変異株の状況も未だ予測できないパンデミックの中、海外から本学大学院への入学、進学を決断した皆さんの意欲と意志の強さに、敬意を表します。ようこそ、山梨大学へ。
       山梨大学は、「地域の中核、世界の人材」を掲げ、世界を視野に入れた最先端の医工農融合研究を推進するとともに、その成果に基づく高度な教育を通じて、地域社会の中核として地域の要請に応えることができる人材、世界を舞台に活躍できる人材を養成し、社会に貢献することを目指しています。この結果、これまで本学から、社会の様々な領域の中核として活躍する優秀な人材を輩出してきました。
       2015年には本学卒業生である大村智先生がノーベル医学?生理学賞を受賞されました。その快挙を大変嬉しく思うとともに、本学にとりましても大きな誇りとなりました。
       皆さんにも、本学の大学院で高度な専門的知識や技術を身につけ、産学官にわたり国際的に活躍できる優れたリーダーに成長していただきたいと願っています。
       COVID-19の影響により、授業や学生生活においても制限や制約はありますが、感染拡大を防ぐため、私たち全員が地球規模で協力し、皆さん一人ひとりが自分の役割を果たしてくれることを願っています。
       これからは、世界文化遺産となった富士山を間近に望むこの美しい山梨で、多くの友人を作り、交流を深め、そして、充実した学生生活を送りながら勉学にいそしんでいただきたいと願っています。皆さん、本日は誠におめでとうございます。

    • ?令和3年10月
      国立大学法人山梨大学
        学長 島田眞路

    •  In the midst of the pandemic, although COVID-19 infection has spread around the world and the effect of new coronavirus variants is still unpredictable, you decided to enter our graduate school from overseas. Allow me to show my respect for your motivation and determination. Welcome to the University of Yamanashi. 
      ? Under the banner of “global professionals at the heart of the community,” the University of Yamanashi aims to develop human resources capable of serving as members of their regional society, meeting community needs, thriving on the global stage and contributing to society by encouraging cutting-edge, international research that fuses medicine, engineering, and agriculture, and lays the foundation for advanced education. As a result of these efforts, the University has cultivated human resources who flourish as key members in many different fields.
       In 2015, Dr. Satoshi ?mura, a graduate of our university, was awarded the Nobel Prize in Physiology or Medicine. We are very pleased and proud of his great success.
       I hope you will develop sophisticated, specialized knowledge and skills in our graduate school as you grow into leaders capable of thriving in academia, industry, and government on a global scale.
       Due to the influence of the COVID-19 infection, there are restrictions in class and campus life, but I hope that all of us will cooperate on a global scale and each of you will do your part to prevent infection from spreading.
       From now on, your experience here in Yamanashi, where the natural beauty of Mount Fuji— now a World Cultural Heritage Site— is always on display, will give you many opportunities to deepen your interaction with others and make friends of all kinds. I sincerely hope that you enjoy a rich, fulfilling university life and apply yourselves to your studies. Congratulations to all of you today.

      ?

    • October 2021
      The University of Yamanashi
      Shinji Shimada, President

  • 【2021年4月】令和2年度入学生(新2年生)へのメッセージ

    •  新2年生の皆さん、新年度が始まりましたが、皆さんに一言、メッセージを伝えたいと思います。
       皆さんが入学した昨年の4月は、im体育官网感染症の蔓延により緊急事態宣言が発出されるなど未曽有の事態となり、入学式を挙行できず、授業も5月開始へ移行となりました。オンラインでの授業が中心となり、サークル活動も制限され、令和2年度の入学生の皆さんは大学生としての実感を持ちえなかった1年だったと思っています。教職員一同、大変申し訳なく思っています。
       現在も変異株が広がっており楽観視できる状況ではありませんが、本学もこの1年でim体育官网感染症に対応するすべを学び、今年度は分散形式ですが各学部?学科単位で入学式を執り行うことができました。このような対応を取ることができたのも皆さんが昨年我々とともに試行錯誤の時を過ごしてくれたからだと思っています。
       一番大変な時期に入学された新2年生の皆さんとも、残る大学生活、これからも一緒に過ごしていきたいと思います。
       今後もどうぞよろしくお願いします。

    • 令和3年4月
      国立大学法人山梨大学
      学長 島田眞路

  • 【2021年4月】令和3年度新入生へのメッセージ

    •  

  • 【2021年3月23日】令和2年度卒業式式辞

  • 【2021年1月4日】令和3年年頭挨拶

    •  学長の島田でございます。im体育官网COVID19感染症の拡大により、オンラインを活用して、年頭のご挨拶を申し上げます。
       改めまして、明けましておめでとうございます。
       未だ出口の見えないコロナ禍で生活様式も大きく様変わりし、年末年始を静かに過ごされたかと思います。こうした厳しい状況の中、新しい年を迎えて、それぞれ決意を新たにされていることと思います。

       今年は、十干十二支(じっかんじゅうにし)によれば、「辛丑(かのとうし)」の年です。“辛(かのと)”とは植物が成長して新しい世代が生まれることを意味し、“丑(うし)”は、粘り強さや誠実が特徴とされているそうです。

       さて、学長に就任してから3月で6年が経過します。4月から更に2年間務めることになりました。この間のリーダーシップと数々の業績が評価されるとともに、更なる持続的な改革を期待していただいたものと身の引き締まる思いです。

       昨年1年は中国武漢にはじまり、世界中に拡大したim体育官网感染症に振り回された年でした。世界の感染者は8千万人を超え、今年前半には1億人を突破する勢いです。死者数も180万人を超えました。米国では感染者2000万人、35万人もの死者数を出しています。我が国も欧米に比べて少ないとはいえ24万人の感染者(中国の3倍弱)を出し、死者数も3500人となっており、アジア地域では少ないとはいえません。GoTo政策の影響もあり、年末にかけての感染者数が急増しました。im体育官网感染症診断に最重要なPCR検査数もいまだに少なく、先進国として感染症対策は十分とはいえません。そのような中、山梨県では感染者588人、死者数11名と全国的にみて比較的感染を抑えているものと思います。
       本学附属病院では、政府がもたつくなか、昨年1月末には感染患者受け入れシミュレーションを実施、2月にはダイヤモンド?プリンセス号の患者さんも引き受けました。その後も、3月6日には県内発症第1例目が入院、現在まで63名の入院患者さんを受け入れています。重症患者さんを中心に受け入れ、高度医療のエクモも行って、尊い命を救ってきました。附属病院の皆さん、病院長をはじめ感染制御部、救急部/ICU、呼吸器内科の先生方、COVID対応のナースの方々には特に感謝したいと思います。また、感染制御部副部長井上修特任教授には県の専門家会議委員としてもリーダーシップを発揮していただき、ありがとうございます。さらに、PCR検査体制をいち早く立ち上げた検査部の皆さんの多大な貢献のおかげで、世界初の髄膜炎患者さんや心肺停止の乳児の診断、県内初のドライブスルー検査などを実施することができました。PCR検査は現在までに1万件以上こなされていることに敬意を表したいと思います。
       附属病院に患者さんを引き受けることは、即、大幅な収入減となります。半年で21億円の収入減となることを覚悟しましたが、im体育官网感染症緊急対策基金を設けましたところ、1月3日現在で5800万円を超えるご寄付をいただきました。このことを含め、国や県をはじめ、県内の市町村、企業や県民の皆様から多大なご支援を賜り、大変感謝しています。
       本学のim体育官网との闘いについては、昨年10月15日に平凡社新書として「コロナ禍で暴かれた日本医療の盲点」を医療の質?安全管理部副部長荒神裕之特任教授との共著で出版しました。皆様方にはぜひお読み頂ければと思います。日本医療の問題点や省庁縦割りの弊害、科学力の低下の原因分析などにも触れています。

       大学全体の話に戻しますと、昨年の最も大きな出来事は、山梨県立大学との連携に係る全国初の取組である「一般社団法人大学アライアンスやまなし」を本格始動したことと思います。取組をさらに強化するため、新年早々、県の支援も受けて新たに地域人材養成推進センターを立ち上げ、運営していきたいと考えています。昨年10月には、県立山梨幼児教育センターも本学内に立ち上げました。これらの取組をはじめとする本学の大学改革は、内閣府や文部科学省から高く評価され、数々の大型資金を獲得することができました。一昨年度、大学改革イノベーション創出環境強化補助金を地方大学では唯一採択され、3億円をいただき、これとは別に、昨年、国立大学改革強化推進補助金として2億円、ダイバーシティー関連で1億4千万円、留学生推進関連では5千万円なども獲得できました。また、燃料電池関連ではNEDOから5年間で19億円の補助事業が採択されています。
       私が学長として最近特に力を入れているのは経費削減プロジェクトです。皆さんにもいろいろな機会でお伝えしていますが、本学はコスト意識が不足していたと思います。特に大型の支出をする際に、“いつも通り”“前例踏襲”ということで無駄遣いを繰り返してきたものと思います。その額は年間10億円以上という試算があり、1年前に市場調査チームを立ち上げ、経費削減を行っていますが、これには聖域はありません。教職員一人ひとりのご理解、ご協力が必要ですので宜しくお願いいたします。今回の新型コロナ対応により失った10億円以上もの赤字を何とか補填するとともに、将来に向けた投資を行っていきたいと考えています。

       本年度が国立大学法人第3期中期目標?中期計画の最終年です。第3期の目標に対する最終評価とともに第4期に向けての課題を設定していかなければなりません。4月からは体制も一新して新たなスタートを切りたいと考えています。
       皆様の健康とともにこの新しい年がより充実した有意義な年になるよう心から祈念いたしまして、私からの年頭のご挨拶とさせていただきます。
       本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

  • 【2020年10月1日】令和2年度秋季入学式式辞

    •  山梨大学の大学院に入学された修士課程17名、博士課程9名の学生の皆さん、誠におめでとうございます。その中には、遠く祖国を離れた多くの留学生がおります。山梨大学の教職員?在学生一同は、皆さんを心から歓迎します。
       im体育官网感染症(COVID-19)の感染拡大は全世界に広がり、未だとどまるところを知らず、私たちの生活にも様々な影響をあたえ続けています。
       このような状況の中、感染拡大を防止する観点?皆様の健康や安全面を最優先として、秋季入学式を中止させて頂きました。また、政府の各種水際対策などにより入国が遅れ、大学の様々な行事や授業開始にも影響が及んでいますこと、皆さまのご理解とご協力に感謝申し上げます。
       留学生の皆さんが多数のため、ここからは英語でのメッセージとします。

       Under the banner of “global professionals at the heart of the community,” the University of Yamanashi aims to develop human resources capable of serving as members of their regional society, meeting community needs, thriving on the global stage and contributing to society by encouraging cutting-edge, international research that fuses medicine, engineering, and agriculture and lays the foundation for advanced education. As a result of these efforts, the University has cultivated human resources who flourish as key members in the many different segments of the real world.
       The news of Dr. Satoshi ?mura winning the Nobel prize 2015 really excited us. We are very pleased and proud of his great success.
       At the University of Yamanashi Graduate School, I hope you develop sophisticated, specialized knowledge and skills as you grow into leaders capable of thriving in academia, industry, and government on a global scale.
       COVID-19 infection has spread all over the world, and the situation is still unpredictable. We must all cooperate on a global scale to overcome this crisis.
       So again, I hope that each and every one of you will do your part to prevent infection from spreading.
       From now on, your experience here in Yamanashi, where the natural beauty of Mount Fuji—now a World Cultural Heritage Site—is always on display, will give you many opportunities to deepen your interaction with others and make friends of all kinds. I sincerely hope that you enjoy a rich, fulfilling university life and apply yourselves to your studies.
       Welcome to the University of Yamanashi.
       Thank you.

  • 【2020年4月7日】令和2年度入学式式辞〈ビデオメッセージ〉

    •  ※動画はこちら

       学長の島田でございます。
       im体育官网による肺炎(COVID-19)の感染症は、世界中に広がり、世界保健機関(WHO)は、先月11日にパンデミック(世界的大流行)を表明し、現在も加速しています。東京オリンピック?パラリンピックも開催が来年に延期されることとなり、クラスター(患者集団)やオーバーシュート(爆発的患者急増)などのワードが飛び交い、東京都をはじめ、いつ緊急事態宣言が出されてもおかしくない状況であり、私たちの生活にも様々な影響が広がっています。私も早くから危機事態を感知し、オリンピックの延期を予感表明しておりました。ここは一歩立ち止まって、冷静に将来のより完璧な五輪を目指してほしいと思います。
       このような状況の中、夢と期待に胸を膨らませてきた新入生並びに心待ちにされていたご家族の皆様方のお気持ちを拝察しますと断腸の思いでございますが、感染拡大を防止する観点?皆様の健康や安全面を最優先として、入学式を中止させて頂きました。また、本格的な授業開始を5月からといたします。このように様々な行事や授業開始にも影響が及んでいますこと、皆さま方のご理解とご協力に感謝申し上げます。
       事態は、時々(じじ)刻々(こくこく)と変化しています。世界と力を合わせて危機的状況を乗り越えなければなりません。
       本学医学部附属病院では、山梨県の病院の代表として病院全体で万全な体制を整え、クルーズ船で感染した人々や世界初の髄膜炎の患者さんや乳児の患者さんなど、県内発症の患者さんを積極的に受け入れ、この世界的な感染症と必死に戦っているところです。
       改めまして、一人ひとりが感染防止に協力をお願いいたします。

       それでは、私から、ビデオメッセージとして、御覧くださっている皆様に心からお祝いを申し上げます。
       桜の花も満開で、甲府盆地を吹く風も暖かさを感じるようになり、新たな門出にふさわしい季節となりました。
       山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,180名の学生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。
       これまで皆さんを支えてこられましたご家族の皆様方に心からお祝いを申し上げます。

       昨年5月、新天皇陛下がご即位されて令和の時代が始まりました。これからの新時代においては、AI?5G?IoT?自動運転など、技術革新の波がさらに押し寄せ、私たちの生活?環境が大きく変化していくでしょう。本学に入学される皆さんの学びも、このような時代を見据えたものになっていかねばなりません。このため、本年度から、全ての学部新入生を対象に、データサイエンスに係る科目を、必修とするなどの、カリキュラム改革を行っております。皆さんが、本学での学びを有意義なものとし、成長していかれることを期待しております。

       本学のキャッチフレーズは「地域の中核、世界の人材」であります。その重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二は、優れた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界を舞台に活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
       この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究活動を進めています。ナノテクノロジー研究の世界的拠点である燃料電池ナノ材料研究センターやクリーンエネルギー研究センター、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、特色ある研究で大きな成果を挙げています。また、医学系を中心とする融合研究臨床応用推進センターでは、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。これらの優れた山梨大学の研究は2016年に「Nature」という世界No.1の科学ジャーナルに紹介されました。
       教育面では、医学部において、独自に一年生から高度な研究を開始できる研究医養成プログラム「ライフサイエンスコース」を用意しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。また、工学部では反転授業やアクティブラーニングをいち早く取り入れ、大きな成果をあげており、生命環境学部には「ワイン科学特別コース」「観光政策科学特別コース」といった全国的に見ても特色のある課程を設置しています。
       さらに、医学部附属病院は、県内唯一の特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、天上吊り下げ型MRI装置、TAVIという高度な心臓手術が行えるハイブリッド手術室、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者さんのニーズに応えた新病棟が稼働しています。医療安全対策、感染対策も万全であり、全国でも屈指の高度な医療を提供する病院であります。病院の経営改善に継続して取り組み、成果をあげており、外部機関から極めて高い評価を受けています。
       一昨年から、新病棟Ⅱ期工事が開始され、本年9月の新々病棟の開院に向けて整備が進んでいます。

       さて、皆さんご承知のように、2015年秋、本学教育学部卒業生である大村智先生のノーベル医学?生理学賞のご受賞に日本中が沸きました。近年厳しい状況におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
       これを機に、大村先生からノーベル賞の賞金をご寄附いただき、それを基に卒業生や一般市民、企業?団体の皆様から温かいご支援をいただき「山梨大学大村智記念基金」を創設し、優秀な学生に対して給付型の奨学金を毎年授与するほか、一昨年7月には、150人収容の記念ホールや展示コーナーを設けた「大村智記念学術館」を本学正門北側に建立しました。
       大村智記念学術館が本学のシンボルとなることにより、永遠に大村博士をご顕彰申し上げるとともに、学生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。

       山梨県は、南方に世界文化遺産の富士山、北方に八ヶ岳、西方に南アルプス連峰を望む風光明媚な地であり、最新の厚生労働省の調査では、自立して日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性が全国第一位で女性は第三位に、また、移住希望地域調査でも毎年上位にランキングしています。本年中には、中部横断自動車道の山梨県~静岡県の全区間が開通し、物流?輸送の効率化、清水港からのインバウンド観光の周遊エリア拡大などが期待されています。更に、2027年にはリニア中央新幹線の東京~名古屋間が開通予定であり、東京から甲府までは<約25分>とアクセスが向上し、経済や産業の発展、人材や文化の融合などによって、新たなイノベーションの創出、さらには地域の活性化が期待されています。
       皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で学ぶことになります。生活環境が大きく変わり、不安もあるかと思いますが、この間、快適に充実した修学生活を送れるよう、学生サポートセンターを中心に、様々な相談?支援体制を整えていますので、気軽にご相談していただければと思います。

       これからの社会は、現時点では想像もつかない仕事に皆さんが将来従事することも考えられ、AIなどを自由自在に駆使することにより、斬新なアイディアや構想を生み出せる力が求められることとなってきます。また、人生100年時代となる一方で、急速な社会変化の中で、学んだ知識はどんどん陳腐化していくことから、絶えず新たな知識を学ぶことが必要になってきます。
       このように変化の激しい未来社会を生き抜くため、皆さんには本学での学びを通じて、専門知識はもちろんのこと、どのような社会になっても求められるであろう、国際的なコミュニケーション能力、課題解決力、論理的思考力、規範的判断力を身に着けることができるよう、努力してほしいと願っています。
       また、大村先生から頂戴した言葉のひとつ、「一期一会」の精神で、目標も考え方も異なる他学部の学生とも積極的に交流を深め、心を開いて語り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ?読書?旅行?芸術などにも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。

       今年も学部や大学院に世界8つの国と地域から68名の留学生を迎えます。
       留学生の皆さんのために、ここから少し英語でメッセージを贈ります。

       To all the international students : we would like to welcome you to Yamanashi.  You are coming from all over the world, including Brazil,China,Madagascar,Malaysia,Mongolia, Republic of Korea, Vietnam and Taiwan.
       It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       We will endeavour to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
       We hope that your stay at our university will be a successful one.
       Thank you.
       (訳)
       留学生の皆さん、山梨へようこそ。ブラジル、中国、マダガスカル、マレーシア、モンゴル、大韓民国、ベトナム、台湾を含む世界各国から来ています。ここにあなたをお迎えして嬉しく思います。 美しい山梨でキャンパスライフを楽しんでいただけることを心より願っております。私たちはあなたの教育ニーズを促進し、あなたのキャリア開発を支援するために最善を尽くすよう努めます。私たちの大学での滞在が成功することを願っています。
       ありがとうございました。

       結びになりますが、ご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       山梨大学に入学された1,180名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、わたくしのお祝いの言葉とさせて頂きます。

  • 【2020年3月19日】令和元年度卒業式式辞〈ビデオメッセージ〉

    •  ※動画はこちら

       学長の島田でございます。
       世界的に流行しているim体育官网による肺炎(COVID-19)の感染拡大は、私たちの生活にも様々な影響が広がっています。
       感染拡大を防止する観点から?新たな門出を迎える卒業生及び修了生、心待ちにしてこられたご家族の皆様方にとって、かけがえのない卒業式?修了式を断腸の思いで中止いたしました。
       皆様のご理解とご協力に心より感謝いたします。
       日々刻々と変化する状況の中で、世界と力を合わせて危機的な事態に立ち向かわなければなりません。
       山梨大学病院はクルーズ船で感染した人々や県内発症の患者さんを積極的に受け入れました。受け入れた9名の患者さんのうち、6名は退院されております。本院もこの世界的な感染症と必死に戦っているところです。
       改めまして、一人ひとりが感染防止に協力をお願いいたします。 

       それでは、私から、ビデオメッセージとして、御覧くださっている皆様にお祝いを申し上げます。
       本日、山梨大学の学部?専攻科?大学院の卒業?修了を迎えた1,093名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。
       また、ご家族の皆様方には、教職員一同、心からお祝いを申し上げますとともに、これまでの本学への厚いご支援に対し、心より御礼申し上げます。

        夢を抱いて入学されてからの学生生活は、あっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この間、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、幅広い教養とともに多くの知識や技術を修得し、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたことと思います。
       また、研究室、部活動やサークル活動などを通じて、尊敬する先生、先輩、同輩、後輩の皆さんなど、様々な人たちとの出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、よき思い出をつくられたものと思います。
       これらを糧にして、それぞれの新たなステージに進んでいってほしいと思います。

        本学では、これまで多くの優れた卒業生?修了生を輩出してまいりました。2015年にノーベル医学?生理学賞を受賞された教育学部卒業生である大村智先生もそのお一人であります。ノーベル賞受賞の快挙は、近年厳しい状況におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
       このご受賞を機に、大村先生からのノーベル賞の賞金をご寄附いただき、それを基に卒業生や一般市民、企業?団体の皆様から温かいご支援をいただき「山梨大学大村智記念基金」を創設し、優秀な学生に対して給付型の奨学金を毎年授与するほか、
       一昨年7月には、150人収容の記念ホールや展示コーナーを設けた「大村智記念学術館」を本学正門北側に建立しました。
       大村智記念学術館が本学のシンボルとなることにより、永遠に大村博士を顕彰申し上げるとともに、学生?同窓生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。大いなる誇りとなる財産をお預かりした私どもは、山梨大学の益々の発展のために、今後とも精一杯努力してまいる所存です。

       ノーベル賞に関しましては、昨年10月には、旭化成名誉フェローの吉野彰先生が、リチウムイオン二次電池の開発が評価され、ノーベル化学賞を受賞されました。吉野先生は、2012年から2017年、本学で次世代エネルギー分野のスペシャリストを目指す大学院生向けの教育プログラムに関わり、その研究内容を評価していただきました。
       吉野先生が評価した大学院生は、大手自動車メーカーに勤め、燃料電池分野の研究で活躍していると聞いております。大変誇らしく思います。大村先生、吉野先生らに続く国際的に活躍し評価される研究者を育成することが大学の使命だと思っています。そのためにも政府は教育研究に対する緊縮政策を大転換し、国立大学を財政的に強力に支援しなくてはなりません。

       近年厳しい環境に置かれている地方国立大学ですが、本学は、全国に先駆けた様々な改革を実施しております。山梨県立大学との連携を進めるための一般社団法人「大学アライアンスやまなし」を昨年12月に設立し、国において制度設計が進められている「大学等連携推進法人」の認定第一号を目指しています。また、内閣府からの国立大学イノベーション創出に関する補助金では、地方国立大学のなかで第一位の評価で採択され、2億円を獲得することができました。
       さらに歳出面の大幅な見直しを進めるため「市場調査チーム」を設立するなどの先進的な取り組みも実施しています。「地域の中核、世界の人材」をキャッチフレーズに教職員一同力を合わせて質の高い教育?研究?社会貢献に誇りを持って取り組んでいきたいと思っています。
       母校を温かく見守り、様々なご支援をお願いします。

        現在の世界情勢は混沌としています。IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどの新しいテクノロジーが引き起こす「第4次産業革命」によって世界経済が大きく変容する中、im体育官网感染、アメリカ大統領選挙、ブレグジットの結末など、先行き不透明な状況が続くものと思われます。
       その一方で、いわゆるSDGs sustainable Development Goals(持続可能な開発のための目標)のもと、先進国と発展途上国が協調して地球規模での課題に取り組んでいくことも進められています。
       こうした世界が抱える課題にも目を向け、その急激な変化に対応して行かなければなりません。

       これからの社会では、皆さんが現時点では想像もつかない仕事に将来従事することも考えられ、AIなどでは代替できない新たなアイディアや構想を生み出せる力が求められることとなってきます。また、人生100年時代となる一方で、急速な社会変化の中で、学んだ知識はどんどん陳腐化していくことから、絶えず新たな知識を学ぶことが必要になってきます。
       このように、皆さんを待ち受けている未来社会は必ずしもバラ色だけではなく、大変厳しいものであることも想像できますが、皆さんが本学における、学びを通して身につけた、課題解決力や、論理的思考力?規範的判断力を基盤として、今後も様々な形で学び続け、力強く社会の中で生きていってほしいと思います。
       どうか自分を信じ、勇気をもって自分なりの人生を紡ぐために漕ぎ出してください。個人としての幸せを追求することはもちろんですが、同時に、高等教育を受けた者として、社会をよりよくするという使命感をもって生きていただきたいと思います。われわれ山梨大学も、皆さんの母校、港としていつでも適切な支援と生涯学習の場をsustainableに提供できるよう、教職員一同力を合わせて進んでいきたいと思っています。

        ところで、今年も卒業生のなかに世界9か国から来られた32名の留学生がいます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、英語でメッセージを送ります。

       Among today’s graduates are32 international students from 9 different countries.
       You have made it to this day after studying hard, and overcoming the difference of languages, lifestyle and food here in Japan.
       I congratulate you on your great efforts, and I wish you every success in your future endeavours.
       I hope that you will look back on time you had here in Yamanashi with fondness, and treasure the memories of the people you met and the things you learned at our university.
       Thank you.
       (訳)
      今年も卒業生の中に、世界各地の9カ国から入学した32名の留学生がいます。留学生の皆さんは、言葉や生活習慣、そして食べ物も異なる日本で学習し、本日の卒業式?修了式を迎えました。皆さんの努力に、心から敬意を表します。これからは、この美しい山梨の地で出会った多くの友、恩師や、本学で学んだ成果を大切にして、世界を舞台に活躍していただきたいと願っています。

        結びになりましたが、皆さんが自分の人生は自分がつくるという自覚を持って、地域のため、日本のため、そして世界のために活躍されることを心より祈念し、わたくしの送る言葉といたします。

  • 【2020年1月6日】令和2年年頭挨拶

    •  皆様あけましておめでとうございます。
       健やかに新しい年を迎えてそれぞれ決意を新たにされていることと思います。

       昨年5月、新天皇陛下がご即位されて令和の時代が始まりました。昨年の印象的な出来事は数々ありますが、吉野彰先生がノーベル化学賞に輝かれたこと、ラグビーワールドカップで格上のアイルランド、スコットランドなどに勝利してベスト8入りを果たしたことがあげられます。私も大いに感動いたしました。
       今年は十干十二支によれば庚子(かのえね)の年です。庚(かのえ)とは植物が成長して新たに変化することを意味し、子(ねずみ)は増えるという意味で成長に向かって種子が膨らみ始める様をいうそうです。再び新しい十二支のサイクルがスタートする令和2年は東京でオリンピック?パラリンピックが開催されます。日本にとって大きな節目となり、本学も様々な面で成長、発展していかなければなりません。

       恒例の世界情勢分析ですが、昨年、年頭挨拶で指摘しました通り、世界情勢は混沌としています。米中貿易戦争に関しては、すさまじい関税の掛け合いがありました。
       トランプ大統領は本年の再選を目指しているためか、現在は一時休戦中のようですが、問題が解決したわけではありませんので、先行きは不透明と言わざるを得ません。中国の急速な台頭に対するアメリカの危機意識は相当なものです。5Gで先行するファーウェイなどは最も許せない企業というわけですが、ここまで対策を放置したアメリカの反応はやや遅すぎた感があります。日本も対策を誤ると大変なことになりそうです。
       ただ、中国も長期化してしまった香港デモや、1月11日の蔡英文現総統が優勢といわれる台湾総統選挙などが情勢に影響を及ぼしかねません。
       アメリカにとっては、東アジア情勢だけでなく、中東情勢も緊迫しています。正月早々のイラン司令官の殺害はイランの激しい怒りを買い、一触即発の情勢です。各地でのテロ勃発など懸念されるところです。
       北朝鮮は12月末の4日間、金正恩委員長主催の異例の党中央委員会総会を開催、アメリカを強くけん制しています。韓国はGSOMIAの破棄は延期しましたが、予断は許されない状況です。
       翻って日本をみますと、昨年暮、日産ゴーン元会長の不法出国がありました。厳重であるはずの監視体制を突破したということですが、日本の甘い監視体制は今後テロリストなどの出入国にも影響を与えかねません。安全保障体制の根幹にかかわる重大問題だと思います。新聞報道によると、経済安全保障戦略をNSC国家安全保障会議が年内に取りまとめることになったり、航空自衛隊が航空宇宙自衛隊となったり、安全保障体制はアップグレードされるそうですが、諸外国に比べ、AI、IOT、5G、Cyber Securityなど全てが周回遅れと言わざるを得ません。

       さて、山梨大学に話を戻しますが、まず、去年暮のgood newsとして、国の予算案にワイン科学研究センターの施設設備と人員配置が認められました。また、医学部では高機能病理解剖システムも認められました。
       さて、昨年一番大きな出来事は、一般社団法人【大学アライアンスやまなし】の設立です。昨年5月に山梨県 長崎幸太郎知事、山梨県立大学 清水一彦学長、私とで連携協定を結び、半年あまりの準備期間を経て、昨年、12月18日設立しました。国立大学法人と県立大学との新法人は全国初の取組です。企画課が中心となり取りまとめてくれました。私が代表で清水学長が副代表、理事は本学から早川理事と袖山理事が入ります。また、専務理事は白沢相談役が務めます。授業科目の共同開設や合同講義の開講、教養科目の充実、大学院特別教育プログラムの共同運営など学生の修学環境の充実を図ってまいります。本年は、この法人が文部科学省の認可する【大学等連携推進法人】にならなければなりません。それで初めての教員のダブルカウントなど規制緩和につながっていくからです。全力を尽くしたいと思います。中央教育審議会でもこの取り組みは注目され、昨年11月の大学分科会にてプレゼンしてきましたが、評価は上々だったようです。国立大学協会のメンバーからも色々と教えてほしいとの問い合わせが多々ありますが、なかなか他県ではうまくいかないようです。
       二番目は内閣府令和元年度国立大学イノベーション創出環境強化事業の採択です。はじめはダメ元のつもりで応募しましたが、研究推進?社会連携機構などの多大な努力もあり、私自ら必死でのプレゼンで臨んだところ、なんと地方55総合大学で唯一、山梨大学だけが採択されました。イノベーション創出強化本部を設置するなど、頑張ってはいますが、この3月までにさらに実績を上げて、新年度の継続採択に向けて努力していきますので、皆様のご協力をぜひお願いいたします。
       三番目は事業決定プロセス改革です。施設?環境部、医学域事務部管理課など施設整備や物品調達など事業決定プロセスにおいて価格の大幅な低廉化が可能であった事実が明らかとなりました。これに対応して、学内研修会を複数回開催したり、10月1日には市場調査チームを立ち上げました。職員一人ひとりが徹底したコスト意識をもち、従来の慣習にとらわれないで交渉にあたらなければ改善しません。これもぜひご協力をよろしくお願いします。
       四番目には附属病院です。本年は附属病院の病棟Ⅱ期工事が完成する予定です。中央診療棟の再整備は喫緊の課題であり、この工事はコストの肥大化など様々な問題を抱えています。少なくとも30年から40年は持続可能な素晴らしい中央診療棟を目指してベストソリューションを出していかなければなりません。

       まだまだほかにも難問山積ですが、皆様一人ひとりのお力をお借りし、ご理解を得ながら全学一丸、ワンチームとなってこの難局を乗り切り、将来を見据えた大学運営に努めて参りたいと考えております。皆様の一層のご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
       この新しい年がより充実した有意義な年になるよう心より祈念いたしまして、私からの年頭の挨拶とさせていただきます。

  • 【2019年4月5日】平成31年度入学式式辞

    •  山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,221名の学生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。
       これまで皆さんを支えてこられましたご家族の皆様方に心からお祝い申し上げます。
       また、長崎幸太郎知事をはじめとするご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り厚くお礼申し上げます。
       間もなく平成の時代が幕を閉じ、5月からは新しい「令和」の時代がスタートします。新元号は万葉集の「初春令月、気淑風和」(しょしゅんの れいげつにして、きよく かぜ やわらぎ)からとられたとのことであり、<美しい日本>を想像させるすばらしい元号と考えます。今年はラグビーワールドカップ2019日本大会の開催、更に来年は2020年東京オリンピック?パラリンピックが開催され、山梨県でも自転車競技が開催されるほか、多くの国のキャンプ地となるなど、大いに活気づくことが予想されます。このような新たな時代に本学に入学される皆さんが、本学での学びを有意義なものとし成長していかれることを期待しております。

       これから皆さんが学ばれる山梨大学は、2002年に旧山梨大学と旧山梨医科大学が統合して誕生したものです。旧山梨大学には、江戸時代1796年に幕府の学問所であった昌平校の分校として「徽典館」という名称で開講した歴史があります。その後、師範学校を経て、現在の教育学部となり、1949年に国立山梨高等工業学校をルーツとする工学部が加わり、旧山梨大学となりました。一方、旧山梨医科大学は、1978年に国が設立する最後の医科大学として開学しました。2002年の大学統合で山梨大学医学部となりました。その後本学は組織改革を継続的に行い、2012年には全国に先駆けて学部の改革再編を進め、生命?食?環境?経営などの諸問題に対処できる人材を育成する「理」?「文」融合型の「生命環境学部」を新設し4学部となりました。また、大学院においては、昨年の大学院博士課程の改組により、医学?工学?農学等が融合した農学系の「統合応用生命科学専攻」を開設、更に本年4月から、大学院教育学研究科の改組により、修士課程を廃止、教職大学院への一本化を図り、以前にもまして幅広く、より体系的で充実した教育?研究を行うことが出来るようになっております。

       本学のキャッチフレーズは「地域の中核、世界の人材」であります。その重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二は、優れた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界を舞台に活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
       この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究活動を進めています。ナノテクノロジー研究の世界的拠点である燃料電池ナノ材料研究センターやクリーンエネルギー研究センター、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、特色ある研究で大きな成果を挙げています。また、医学系を中心とする融合研究臨床応用推進センターでは、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。これらの優れた山梨大学の研究は2016年に「Nature」という世界No.1の科学ジャーナルに紹介されました。
       教育面では、医学部において、先端的教育システムとして「ライフサイエンスコース」という、一年生から高度な研究を開始できる研究医の養成システムを構築しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。また、工学部では反転授業やアクティブラーニングをいち早く取り入れ、大きな成果をあげており、生命環境学部には「ワイン科学特別コース」、人気アニメ「ゆるキャン△」による地域おこしで活躍した「観光政策科学特別コース」といった全国的に見ても特色のある課程を設置しています。

       さらに、医学部附属病院は、県内唯一の特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、より正確で難度の高い脳神経外科手術ができる天上吊り下げ型MRI装置、TAVIという高度な心臓手術が行えるハイブリッド手術室、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者さんのニーズに応えた新病棟が稼働しています。特に「ダヴィンチ」の手術件数は2013年の導入から300例を突破し、県内医療機関並びに多くの患者さんに貢献しています。医療安全対策、感染対策も万全であり、全国でも屈指の高度な医療を提供する病院であります。病院の経営改善に継続して取り組み成果をあげており、外部評価機関から極めて高い評価を受けています。
       昨年からは新病棟Ⅱ期工事が開始され、2020年10月の新々病棟の開院に向け、先進医療を含む高度医療をより一層推進していきます。

       さて、皆さんご承知のように、2015年秋、本学教育学部卒業生である大村智先生のノーベル賞受賞に日本中が沸きました。大村先生のイベルメクチンという寄生虫病の特効薬の発見?開発で、アフリカなどで流行していたオンコセルカ症に絶大な効果があり、副作用も極めて少なく耐性の出ない奇跡的な薬として数億人もの生命を救ってきました。さらに疥癬という診断、治療の困難であったダニによる皮膚感染症にも著しく効果があり、日本を含む世界中の患者さんのQOLを向上させてきました。日本人で3人目のノーベル医学?生理学賞を受賞されるという吉報、近年厳しい状況におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
       これを機に、大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を設置し、医学部キャンパスには、先生が発見されたイベルメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。大村先生からは、ノーベル賞賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、加えて多くの方々からの浄財を得て、優秀な学生に対して給付型の奨学金を毎年授与しております。 
       そして昨年、基金を活用した念願の大村智記念学術館がim体育官网に完成し、7月19日にオープニングセレモニーを挙行しました。私が司会を務め、大村先生と京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授とのビッグ対談が実現し、お二人から、「平らな道を行くよりも難しい道に挑戦すること」、「人の教えから謙虚に学ぶこと」、「本当に信頼できる友達をもつこと」など、若者にエールをいただきました。大変有意義で楽しい対談となり、本学のホームページからこの対談の内容が動画を含め全てご覧いただけるようになっております。是非ご覧になってください。
       大村智記念学術館が本学のシンボルとなることにより、永遠に大村博士を顕彰申し上げるとともに、学生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に活用されるよう願っております。来館者は3月4日には1万人を突破いたしました。大いなる誇りとなる財産をお預かりした私どもは、山梨大学の益々の発展のために、今後とも精一杯努力してまいる所存です。
       山梨県は、南方に世界文化遺産の富士山、北方に八ヶ岳、西方に南アルプス連峰を望む風光明媚な地であり、最新の厚生労働省の調査では、自立して日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性が全国第一位で女性は第三位に、また、移住希望地域調査でも毎年上位にランキングしています。近年中には、中部横断自動車道の山梨県~静岡県の全区間が開通し、物流?輸送の効率化、清水港や静岡空港からのインバウンド観光の周遊エリア拡大などが期待されています。更に、2027年にはリニア中央新幹線の東京~名古屋間が開通し、東京から甲府までは約25分とアクセスが向上し、経済や産業の発展、人材や文化の融合などによって、新たなイノベーションの創出、さらには地域の活性化が期待されています。

       皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で学ぶことになります。生活環境が大きく変わり、不安もあるかと思いますが、快適に充実した学生生活を送れるよう、学生サポートセンターを中心に、様々な相談?支援体制を整えていますので、気軽に相談していただければと思います。

       現在政府は、今後到来する未来社会を、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、超スマート社会(Society5.0)と位置付け、テクノロジーを駆使し、サイバー空間すなわち仮想空間とフィジカル空間すなわち現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と、少子?高齢化や地方の衰退などの社会的課題の解決を両立することを目指しています。
       このような社会では、現時点では想像もつかない仕事に将来従事することも考えられ、現時点でのAIなどでは代替できないAIを超えた新たなアイディアや構想を生み出せる力が求められることとなってきます。また、人生100年時代となる一方で、急速な社会変化の中で、学んだ知識はどんどん陳腐化していくことから、絶えず新たな知識を学ぶことが必要になってきます。
       このように変化の激しい未来社会を生き抜くため、皆さんには本学での学びを通じて、専門知識はもちろんのこと、どのような社会になっても求められるであろう、国際的なコミュニケーション能力、課題解決力、論理的思考力、規範的判断力を身に着けることができるよう、努力してほしいと願っています。
       また、大村先生から頂戴したお言葉のひとつ、「一期一会」の精神で、目標も考え方も異なる他学部の学生とも積極的に交流を深め、心を開いて話り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ?読書?旅行?芸術などにも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。

       今年も学部や大学院に世界9か国から64名の留学生を迎えました。
       留学生の皆さんのために、ここから少し英語でスピーチします。

       To all the international students here today: we would like to welcome you to Yamanashi. You have come from all over the world, including Brazil, China, Indonesia, Malaysia, Nepal, Republic of Korea, Peru, Thailand and Vietnam.
       It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       We will endeavour to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
       We hope that your stay at our university will be a successful one.
       Thank you.

       結びになりますが、本日、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、並びにご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       本日、山梨大学に入学された1,221名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、わたくしの式辞と致します。本日は、誠におめでとうございます。

  • 【2019年3月20日】平成30年度卒業式式辞

    •  本日、山梨大学の学部?専攻科?大学院の卒業式?修了式を迎えた1,191名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。
       また、この晴れの日を心待ちにしてこられたご家族の皆様方には、教職員一同、心からお祝いを申し上げますとともに、これまでの本学への厚いご支援に対し、心より御礼申し上げます。
       ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り誠に有難うございます。
       今日の佳き日を迎え、夢を抱いて入学されてからの学生生活は、あっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この間、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、幅広い教養とともに多くの知識や技術を修得し、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたことと思います。
       また、研究室、部活動やサークル活動などを通じて、尊敬する先生、先輩、同輩、後輩の皆さんなど、様々な人たちとの出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、よき思い出をつくられたものと思います。これらを糧にして、それぞれの新たなステージに進んでいってほしいと思います。

       皆さんが在学中の山梨大学での大きな出来事としては、本学教育学部卒業生である大村智先生が2015年ノーベル医学?生理学賞を受賞されたことがあげられます。
       この快挙は、近年厳しい状況におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
       大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を設置し、医学部キャンパスには、先生が発見されたエバーメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。大村先生からはノーベル賞賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、加えて多くの方々からの浄財を得て、優秀な学生に対して給付型の奨学金を毎年授与しております。
       そして昨年、基金を活用して建設した念願の大村智記念学術館が完成し、7月19日にオープニングセレモニーを挙行しました。私が司会を務め、大村先生と2012年のノーベル医学?生理学賞受賞者である、京都大学IPS細胞研究所長の山中伸弥教授とのビッグ対談が実現し、お二人からは、「平らな道を行くよりも難しい道に挑戦すること」、「人の教えから謙虚に学ぶこと」、「本当に信頼できる友達をもつこと」など、若者にエールをいただきました。本学のホームページからこの対談の内容が動画を含め全てご覧いただけるようになっており、ノーベル賞受賞者お二人の力強いメッセージを国内外に発信しているところです。
       大村智記念学術館が本学のシンボルとなることにより、永遠に大村博士を顕彰申し上げるとともに、学生?同窓生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。来館者は3月4日すでに1万人を突破いたしました。大いなる誇りとなる財産をお預かりした私どもは、山梨大学の益々の発展のために、今後とも精一杯努力してまいる所存です。

       ノーベル賞に関しましては、昨年10月には、京都大学特別教授の本庶佑先生が、がん免疫療法の発展に貢献したとしてノーベル医学?生理学賞を受賞されました。本庶先生の研究成果を基に開発された、がん免疫治療薬「オプジーボ」は、当初皮膚のがんメラノーマに対する分子標的抗体薬として開発されました。私自身皮膚科専門医であり、さらに専門がメラノーマです。また、日本皮膚科学会理事長としてオプジーボの開発に立ち会ってまいりましたので感慨深いものがあります。その後さまざまな癌の治療に効果があることが分かり、今では他に治療の手立てのなかった世界中のがん患者さんの命を救っています。ここ10年間で4人目のノーベル医学?生理学賞の受賞は、日本の医学分野の研究開発レベルが世界トップクラスの水準にあることを示すものであり、大変誇らしく思います。ただこれが持続可能sustainableでなくてはなりません。山中先生、大村先生、大隅先生、本庶先生らに続く国際的に活躍し評価される研究者を育成することが大学の使命だと思っています。そのためにも政府は教育研究に対する緊縮政策を大転換し、国立大学を財政的に強力に支援しなくてはなりません。
       平成の30年間を振り返りますと、テクノロジーの急速な進化、人々の意識を変えた自然災害や事件、世界情勢の変化などがめまぐるしく起きる激動の時代でした。
       バブル経済で幕開けした平成は、アナログからデジタルへの変化の時代であったとも言えると思います。インターネットの世界規模での爆発的な普及をはじめとする情報通信技術の進化により社会環境は大きく変化し、私たちの生活を豊かにしてきました。皆さんの世代では、いまやスマートフォンは当たり前となり日々の生活になくてはならないものになっていると思いますが、このようなことは平成のはじめには想像もできなかったことです。
       その一方で、バブル崩壊とそれに続く長期デフレが進行し、日本経済の国際的地位が低下するとともに、阪神?淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの震災による大きな被害が相次いで発生し、昨年も西日本豪雨、北海道胆振東部地震が発生するなど、数多くの自然災害が私たちを襲いました。現在でも復興への努力が続けられていますが、自然災害の多いこの国に住む私たちは宿命としてこれを受けとめ、後世にしっかりと伝えていくとともに、それを乗り越えるためにさらなる英知を結集しなければなりません。このことは皆さんにも託された大きな課題であります。

       さて、今年5月には平成の時代が幕を閉じ、新しい時代がスタートします。来年は2020年東京オリンピック?パラリンピックが開催され、さらに2025年には大阪で2回目の万国博覧会の開催が決定するなど、新たな時代は活気に満ちた元気な社会になることが期待されます。
       ただ、現在の世界情勢は激動の真只中にあります。IoTやビッグデータ、AI、ロボットなどの新しいテクノロジーが引き起こす「第4次産業革命」によって世界経済が大きく変容し、米国ではGAFA、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルが世界経済を牽引し、中国ではBAT、バイドウ、アリババ、テンセントやファーウェイなど巨大企業が生まれ米国を脅かしています。残念ながら日本は蚊帳の外で周回以上の大変な遅れをとっています。北朝鮮の核開発を巡る2回目の米朝首脳会談決裂後の動き、さし迫る英国のEU離脱問題の行方、停滞する北方領土問題など、先行き不透明な状況が続くものと思われます。その一方で、いわゆるSDGs sustainable Development Goals(持続可能な開発のための目標)のもと、先進国と発展途上国が協調して地球規模での課題に取り組んでいくことも進められています。
       こうした世界が抱える課題にも目を向け、その急激な変化に対応して行かなければなりません。
       現在政府は、今後到来する未来社会を、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、超スマート社会(Society5.0)と位置付け、テクノロジーを駆使し、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と、少子?高齢化や地方の衰退などの社会的課題の解決を両立することを目指しています。
       このような社会では、現時点では想像もつかない仕事に将来従事することも考えられ、AIなどでは代替できない新たなアイディアや構想を生み出せる力が求められることとなってきます。また、人生100年時代となる一方で、急速な社会変化の中で、学んだ知識はどんどん陳腐化していくことから、絶えず新たな知識を学ぶことが必要になってきます。
       このように、皆さんを待ち受けている未来社会は必ずしもバラ色だけではなく、大変厳しいものであることも想像できますが、皆さんが本学における学びを通して身につけた課題解決力や、論理的思考力?規範的判断力を基盤として、今後も様々な形で学び続け、力強く社会の中で生きていってほしいと思います。

       どうか自分を信じ、勇気をもって自分なりの人生を紡ぐために漕ぎ出してください。個人としての幸せを追求することはもちろんですが、同時に、高等教育を受けた者として、社会をよりよくするという使命感をもって生きていただきたいと思います。われわれ山梨大学も、皆さんの母校、港としていつでも適切な支援と生涯学習の場をsustainableに提供できるよう、教職員一同力を合わせて進んでいきたいと思っています。

       ところで、今年も卒業生のなかに世界11か国から来られた49名の留学生がいます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、英語でメッセージを送ります。

       Among today’s graduates are 49 international students from 11 different countries.
       You have made it to this day after studying hard, and overcoming the difference of languages, lifestyle and food here in Japan.
       I congratulate you on your great efforts, and I wish you every success in your future endeavours.
       I hope that you will look back on time you had here in Yamanashi with fondness, and treasure the memories of the people you met and the things you learned at our university.
       Thank you.
      (訳)
       今年も卒業生の中に、世界各地の11カ国から入学した49名の留学生がいます。留学生の皆さんは、言葉や生活習慣、そして食べ物も異なる日本で学習し、本日の卒業式?修了式を迎えました。皆さんの努力に、心から敬意を表します。これからは、この美しい山梨の地で出会った多くの友、恩師や、本学で学んだ成果を大切にして、世界を舞台に活躍していただきたいと願っています。

       結びになりましたが、皆さんが自分の人生は自分がつくるという自覚を持って、地域のため、日本のため、そして世界のために活躍されることを心より祈念し、私の式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

  • 【2019年1月4日】平成31年年頭挨拶

    •  明けましておめでとうございます。
       新しい年を迎えて、皆様それぞれ決意を新たにされていることと思います。
       今年は十干十二支によれば、己亥(つちのとい)の年です。〝己(つちのと)?とは、植物が成長して整っていることを意味し、〝亥(い)?は生命力が閉じ込められているさまを言うそうです。
       確かに世界情勢を眺めてみますと、米中貿易戦争で互いに関税を引き上げ合うなど、激化することが予想されます。トランプ米大統領は中間選挙を終え、下院は民主党に負けたものの、上院は過半数を死守、3年目に入り再選を目指して頑張らなければならないところです。ところが就任以来、次々と自分で任命したティラーソン国務長官やマクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官など政府高官を罷免し、昨年末にはジム?マティス国防長官まで更迭してしまいました。政府中枢はポンペイオ国務長官やボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官など対中強硬派で固められた感があります。あらゆる輸入品の関税を引き上げただけでなく、中国を代表する5G(第5世代移動通信システム)を先導するハイテク企業であるファーウェイ社やZTE社を排除し、またカナダでファーウェイCFOを逮捕するなど不穏な空気が漂っています。我が国もファーウェイの排除には追従せざるを得ませんでしたが、中国の報復も懸念されます。関税問題は飛び火してくるかもしれません。
       不穏といえば、韓国もレーダー照射、徴用工問題、従軍慰安婦など異様な反日政策をとっています。北朝鮮もミサイル開発を公然と続けていることが報道されており、これでは制裁を継続するしかありません。英国のEU離脱、ドイツやフランスをはじめとするヨーロッパ各国の右傾化や政府の不安定化、中東情勢なども不穏な空気の要因です。
       我が国もこのような不安定な国際情勢からくる影響を受けるのは必然ではありますが、安倍政権が比較的安定しているのが救いかもしれません。
       本年は、天皇陛下のご退位及び皇太子殿下のご即位が行われます。また、G20が日本で初めて大阪で開催され、スポーツ面ではラグビーワールドカップが開催されるなど、ビッグイベントが目白押しですが、これらを乗り切っていきたいものです。

       さて、本学では昨年、大村智先生のノーベル賞受賞記念寄附金が3億7千万円以上も集まり、7月19日に大村智記念学術館が完成し、大村智先生?山中伸弥先生のノーベル賞受賞者同士による対談が実現し、無事成功裏に行われました。司会を務めた私にとっては昨年一番の出来事でした。
       また、昨年末創設した海外留学生を支援する「甲府市ふるさと応援寄附金」も、初の試みにも関わらず、1千万円超も集まりました。皆様のご協力に感謝致します。
       大学院では「統合応用生命科学専攻」を新設し、教育学研究科を教職大学院に一本化?拡充することも決まりました。懸念であったエネルギー分野における「卓越大学院」も、早稲田大学主導ですが無事採択されました。医学部では創立40周年記念事業が盛大に行われ、附属病院では医師臨床研修マッチングにおいて史上初めてフルマッチし、特定共同指導も無事乗り切りました。さらに新病棟Ⅱ期棟にも着工しました。

       最も大切な本学への運営費交付金を含む本年度予算ですが、2年連続年越しで未だ本学へ明示されておりません。本年度は財務省主導でトータル1,000億円を機能強化として吸い上げられていますので、基盤経費は例年より不安定化しています。予算が前年末に決まらないのは極めて問題だと思います。私は以前から国立大学協会で、運営費交付金の件に関して「財務省と戦って引き上げるべき」と発言していますが、このところやっと会長でもある京都大学の山極総長が財務省と戦う姿勢を見せています。このまま実質上減少していけば、山中先生、大村先生、大隅先生、本庶先生のようなノーベル賞はもう望めなくなります。
       国立大学は常に政府から改革を求められています。大学統合を含めたガバナンス改革や人事給与マネジメント改革、入試改革などがその例です。本学においても大学連携について検討中です。また、退職金付年俸制も取り入れていかなければなりません。
       しかし、このガイドラインも昨年中に文部科学省から示されるはずでしたが、未だに明示されていません。問題山積ですが、皆さんと共に何とか解決していくつもりです。

       昨年、学長任期について新年度から2年間延長を決めていただきましたので、精一杯努力していく所存です。皆様のご協力、ご助言を宜しくお願い申し上げまして、新年のご挨拶と致します。

  • 【2018年6月】日本皮膚科学会理事長 退任に際して

    •  この度、2018年6月1日付けを持ちまして、3期6年務めました日本皮膚科学会(日皮会)理事長を無事退任致しました。山梨大学皮膚科教授の後任は、准教授であった川村龍吉先生に決まり、現在、皮膚免疫学、ウイルス学の専門家として活躍してくれています。
       私の学長の任期はあと3年ありますが、ひとつのけじめとして今般、9月1日理事長退任、教授退任の記念地方会を開催させて頂く運びとなりました。

       思い返してみますと、東京大学医学部を1977年に卒業後、皮膚科に入局して以来、実に多くの方々にお世話になり、今日まで無事務めて参りました。まずは心から御礼申し上げたいと思います。
       私は1952年4月8日京都で生まれ、京都の洛星中?高等学校の卒業です。進学校ではありますが、文武両道を奨励しており、中学1年生時に野球部に入部、中学3年生時には京都市中学野球大会にて3番センターで出場、準優勝しています。その後、洛星高校からは現役で初めて1971年に東京大学理科三類に入学、1977年に卒業しました。
       ただちに皮膚科に入局、助手としてスタートしました。1979年から1年間、関東中央病院で故西脇宗一先生から臨床皮膚科学の薫陶を受けました。1981年には医局長就任、故久木田淳教授が会長をされた、第18回国際皮膚科学会のときには医局長としてお手伝いしました。同年、図らずもメラノーマの研究で日本皮膚科学会皆見賞を受賞しました。メラノーマをなんとか治したい、それには免疫療法しかないと思い、東京大学免疫学教室(故多田富雄教授)に国内留学しました。ここで生涯の師、奥村康先生(順天堂大学アトピーセンター長)に出会いました。約1年後、1983年5月から米国NIHでSteve Katz博士に師事、4年間過ごしました。メラノーマの免疫療法はあきらめたわけではありませんでしたが、この治療は同じNCIの外科部門でSteve Rosenberg博士が研究されていました。いまや世界の腫瘍免疫学のリーダーであるRosenberg先生も当時はLAK治療しかなく、これは「サイエンス」ではないと免疫学者の間では批判にさらされていました。そこで私は皮膚の免疫を極めようと基礎の免疫学、すなわちLangerhans細胞と抗原提示、当時発見されようとしていたγδT細胞とT細胞レセプターの研究を行いました。

       1986年に山梨医科大学初代教授の故堀嘉昭教授にぜひにと請われて助教授として赴任しました。ところが、堀先生は1987年には九州大学へ転任されました。更に、1988年には東京大学から玉置邦彦教授が2代目教授として赴任されました。1991年には、東京大学助教授(分院皮膚科長)として東京大学に戻りました。1994年、玉置先生が山梨医科大学から東京大学教授に戻られることになり、1995年、その後に第3代教授として山梨医科大学に赴任しました。
       その後、20数年間、山梨に居住することになります。このNIH時代後半から山梨に落ち着くまでの10年間は、まさに臥薪嘗胆の時期で、色々な面で随分鍛えられたものと思います。

       1995年教授に就任したときは、月並みかもしれませんが、研究、臨床、教育で超一流を目指そうと考えました。特に研究に関しては「失われた10年」を取り返すべく戦略を練りました。臨床面では医師として当然のことですが、診療において絶対手を抜くことなく、学び続けるということ。これは医局員の専門医試験合格率100%に表れていると思います。まずは、?人材?ということで、東京大学から山田伸夫先生、京都大学から北嶋敏之先生に来て頂きましたが、種々の事情で早めに辞任されたのは残念でした。山梨という独特の環境下では困難なことも多かったものと拝察しています。そうこうするうちに2003年にはテキサス大学 高島明教授のもとで活躍していた松江弘之先生が赴任してくれることになりました。強力な助っ人を得たことで、これを転機に3本柱が完成しました。すなわち松江助教授、NIH留学組の柴垣直孝講師、川村龍吉講師との3本柱で研究体制が整いました。ちなみに松江先生は2006年千葉大学教授にご栄転されました。
       とにかく本学卒業生を育てたいとの強い思いから、先ず1期生の山田宏司先生(カナダアルバータ大学、神保孝先生)と塚本克彦先生(NIH,Vince Hearing先生)、3期生以降、齊藤敦先生(NIH, Mark Udey先生、玉置邦彦教授が送られました)、川村龍吉先生(順天堂大学 奥村康先生→NIH,Andy Blauvelt先生)、柴垣直孝先生(Emory大学 Wright Caughman先生→がん研 浜田先生→NIH,Mark Udey先生)、林暁先生(順天堂大学 奥村康先生→テキサス大学 高島明先生)、椙山秀昭先生(千葉大学 齊藤隆先生→Case Western Reserve大学 Kevin Cooper先生)、清水顕先生(がん研 宮園浩平先生(現東大)→ウプサラ大学 Arne ?stman先生)、古橋正男先生(同上)、原田和俊先生(がん研 野田哲生先生→Stanford大学 Paul Khavari先生)、猪爪隆史先生(慶応大学 河上裕先生→NIH, Steve Rosenberg先生)、三井広先生(Rockefeller大学 Jim Krueger先生6年間!)、小川陽一先生(NIH, Mark Udey先生)、神﨑美玲先生(NIH,Vince Hearing先生)、青木類先生(Ludwig-Maximilian大学、Thomas Ruzicka先生)、岡本崇先生(Toledo大学、高島明先生)
       今、振り返ってみても多数の先生方が多彩なラボに留学しました。初期の頃は基本的には一流の基礎のラボに国内留学をしてから海外留学をしたので、それぞれの研究を発展させて戻ってきてくれました。初期の投資が成功したからか、3本柱がそろった2003年頃から、海外の一流誌に継続的に論文が掲載されるようになりました。特に川村グループの論文は、JI、 Blood、 JCI、 Cell Host and Microbe、JIDなど次々と発表されました。

       日本研究皮膚科学会は、私の最も力を入れた学会ですが、1998年には当時の北島康雄理事長(岐阜大学)に抜擢していただき初代学術委員長をつとめ、2002年事務局長、2005年理事長となりました。その最終年、2008年には第5回国際研究皮膚科学会(IID)会長となりました。私の故郷、京都で開催できたのは光栄でした。私の人生のなかでも最もepoch-makingなことでした。IIDでは1350演題が集まりアメリカ450題、ヨーロッパ450題、日本/アジア450題、参加人数もアメリカ650名、ヨーロッパ650名、日本/アジア650名とほぼ均等になりました。日本からのプレナリー演題も第3回IID(1998年ケルン)では34題中2題、第4回IID(2003年マイアミ)では4題だったのが、第5回IIDでは13題と飛躍的に伸びました。(ちなみにヨーロッパは5題!)山梨からも2題と日本の中では最多でした。このIIDの大成功は私のNIH留学時代から営々と築き上げてきたアメリカSID、ヨーロッパESDR人脈の力強いサポートのおかげだったと思います。この大成功のおかげでILDSからCertificate of Appreciation、ESDR、SID、American Dermatological Association、ドイツ皮膚科学会、台湾皮膚科学会などからHonorary Memberの称号を頂きました。身に余る光栄です!第8回になるIID開催(2023年)は韓国ソウルと日本東京の熾烈な争いになりましたが、昨年12月、日本(会長 椛島健治教授:事務局長 藤本学教授)に決まり、次世代に無事バトンを渡すことができたと喜んでいます。

       2012年から、これも図らずも日本皮膚科学会理事長となりました。日皮会では私はJournal of DermatologyのEditor in Chiefを2000年から2011年まで務め、2001年にはimpact factor(IF)をつけました。そのためにIFを評価するCurrent ContentsのChief EditorにPhiladelphiaまで面会に行ったり大変な努力はしました。しかし、それ以外は専門医試験委員を長年務めたぐらいで、それほど活躍の場はありませんでした。その私が理事になったと同時に理事長となったのは、JSID関係者の強いサポートがあったものと考えています。就任はサプライズではありましたが、結果的には3期6年間務め上げ、今般無事退任いたしました。

       1年未満で事務局長解任など色々ありましたが、理事、理事長の任期設定、女性理事創設など改革に取り組みました。ある意味ぎくしゃくしていたJSIDとの関係修復(現在JSID事務局は日皮会事務局と同じビル、同じフロアにあります)、IIDへの資金援助など行えるようにしました。ロドデノール問題にもいち早く委員会を立ち上げ、適切に対処しました。最近話題になっているAIの導入も、AIワーキンググループ(委員長 藤本学筑波大学教授)を作り、AMEDの大型研究費に無事採択されました。また、学会開催を運営会社に頼らず独自に運営できるように学会内に運営会社から優秀な事務局員を迎え、学会チームを立ち上げました。それにより、財政面でも透明性が増し、より収益が増し、日皮会の運営も黒字体質に転換できました。さらに、反対意見もありましたが臨床試験はすべて日皮会に報告するシステム(治験委員会)もつくりました。この二つの取組は極めて先駆的であり、日皮会が初めてであります。他学会も取り入れるべきだと考えています。

       国際的にはバンクーバーのWorld Congress of Dermatology(2015年)の際、ILDSの理事に椛島健治京大教授が決まりましたが、韓国、中国、シンガポールなど次々と手を挙げた中、これも長年にわたって築き上げてきた世界の皮膚科学会の人脈を駆使して日本の理事枠を死守しました。いくつもの国々のパーティーに家内とともに参加し、椛島先生を宣伝してまわってがんばりました。国際政治、外交もこのようなものかと良い経験になりました。

       理事長として一番力を注いだのは、日本専門医機構の改革です。この機構は学会軽視の思想で運営されていました。このままいくと専門医システムが崩壊するとの危機感から社員総会では積極的に発言しました。その中、最も重要な理事?理事長選挙が一昨年行われました。13科ある外科系学会から2名役員選考委員が選ばれるのですが、なんと最大会員を抱える機構派の外科や整形、産婦人科を押さえて、皮膚科理事長である私と脳神経外科学会 嘉山孝正理事長が選ばれました。各学会理事長も機構改革への強い意志を示されたものと考えます。日本医師会の先生方とも協力して22名の理事のうち、理事長、副理事長を含む18名を入れ替え、新理事長には学会重視派の吉村博邦先生を選出することができました。今の機構は運営は問題ないとはいえませんが、学会重視を宣言しており学会否定のコンセプトは打ち砕いたものと思います。あとは東京一極集中にいかに対処するかだと考えます。(週刊ダイヤモンド2018年5月19日号)

       山梨大学へ戻りますが、2009年からは病院長を拝命致しました。2008年IID成功で人生上、ひとつの区切りかと思っていましたが、学究肌の私がまさか病院長とは自分でも驚きました。2002年から感染対策委員長、2005年から安全管理担当の副病院長にはなっていましたので、さまざまなインシデントが発生するなか、これらの職を無難につとめてきたからかもしれません。

       病院長に就任した途端、セクハラ詐欺師の強制退院事件や代理ミュンヒハウゼン症事件が起こり、前途多難と覚悟しました。これらをGRMや事務の方々と無事乗り切ったのが自信につながりました。最も印象に残るのは、2011年3月11日、東日本大震災です。直後の停電、計画停電に翻弄されながら3月18日から5月13日まで南三陸町に22チーム、124名を送り続け、医療支援を成功させました。私自身も2回行きました。聞くところによると国立大学病院長自らが医療支援に出向いたことは、他病院ではなかったそうです。また、山梨大学病院事務職員の志気の高さには感服しました。被災地の皆さんから非常に高く評価されていました。

       また、看護部長をパワハラにて事実上解任、看護部が混乱の極みに達してしまったので、自ら看護部長を引き受け、副部長会、師長会を取り仕切り、全師長面接を行って看護部を立て直しました。また薬剤部も大量辞職があり、原因となったパワハラを放置していた薬剤部長を解任して薬剤部長になり、その後、適切な人事配置により薬剤部も再建しました。大学病院の病院長の中でも看護部長、薬剤部長、栄養管理部長を併任したのは私ぐらいだと自負しています。
       現在、中央官庁などでも問題になっているパワハラ/セクハラ/いじめ/のない一人一人が幸せに働ける職場を目指して頑張りました。

       現在、学長として3年目を終え、4年目に入っています。今回再選されましたので2021年まで任期があります。学長になって最も大きな出来事は、本学教育学部卒業の大村智先生が2015年ノーベル医学生理学賞を受賞されたことです。すぐに特別栄誉博士になって頂くとともに、図書館に胸像設置、医学部にはエーベルメクチンの分子構造模型を設置しました。大村智記念基金を募集して約3億7千万円集めました。大村先生もノーベル賞賞金の一部をご寄附下さいました。先生のご希望で優秀学生の奨学金にあてるとともに、大村智記念学術館を建造することにしました。7月19日には大村智―山中伸弥ノーベル賞学者対談が実現し、私が司会を務めさせて頂く予定です。

       国立大学では、運営費交付金(人件費+研究費)の毎年1%削減が行われ、すでに10%削減され、現在でも実質上、削減され続けています。山梨大学のような地方国立大学は最も影響を受け、現在、退職教員の不補充や人勧による人件費の上昇を凍結したりして対応しています。このままでは大学として教育?研究力がじり貧になってしまいますので、何とかこの誤った財務省/文科省方針を転換すべく努力していくつもりです。(日本経済新聞2017年4月3日)

       学長としてはまだまだ難問山積みですが、日皮会理事長退任という大きな節目でもありますので、理事長および山梨大学皮膚科教授の退任のご挨拶と致します。

       これまで支えて下さった皆様方に今一度心から感謝申し上げ、稿を閉じることにします。
       誠にありがとうございました!

  • 【2018年4月6日】平成30年度入学式式辞

    •  山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,185名の学生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。
       これまで皆さんを支えてこられましたご両親をはじめ、ご家族の皆様方に心からお祝い申し上げます。
       また、ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り厚くお礼申し上げます。

       これから入学生の皆さんが学ばれる山梨大学は、2002年に旧山梨大学と旧山梨医科大学が統合して誕生しました。旧山梨大学は、江戸時代1796年に幕府の学問所であった昌平校の分校として「徽典館」という名称で開講した歴史があります。その後、師範学校を経て、現在の教育学部となり、1949年に工学部が加わり、旧山梨大学となりました。
       旧山梨医科大学は、国が設立する最後の医科大学として開学しました。2002年の統合後、2004年 国立大学法人山梨大学となり、以来本学は組織改革を継続的に行い、2012年には全国に先駆けて学部の改革再編を進め、生命?食?環境?経営などの諸問題に対処することのできる人材を育成する「理」?「文」融合型の「生命環境学部」を新設しました。また、本年4月からは大学院組織の改編により、医学?工学?農学等が融合した「大学院医工農学総合教育部(博士課程)」が開設され、新たに農学系の「統合応用生命科学専攻」が設置されます。以前にもまして幅広く、より体系的で組織的な充実した教育?研究を行うことが出来るようになりました。

       本学のキャッチフレーズは「地域の中核、世界の人材」であります。その重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二は、優れた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界を舞台に活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
       この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究を進めています。ナノテクノロジー研究の世界的拠点である燃料電池ナノ材料研究センターや、クリーンエネルギー研究センター、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、各々大きな成果を挙げています。また、医学系を中心として、融合研究臨床応用推進センターでは、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。これらの優れた山梨大学の研究は一昨年7月に「Nature」という世界No.1の一流誌に紹介されました。
       更に医学部では、先端的教育システムとして「リエゾンアカデミー?ライフサイエンス特進コース」という一年生から高度な研究を開始できる研究医養成システムを構築しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。工学部ではアクティブラーニング、テニュアトラック制度をいち早く取り入れ、教育研究面で大きな成果をあげています。

       また、医学部附属病院は、特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、天上吊り下げ型MRI装置、TAVIという高度な心臓手術が行えるハイブリッド手術室、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者のニーズに応えた新病棟が稼働しています。医療安全対策、感染対策も万全であり、全国でも屈指の高度な医療を提供する病院であります。病院の経営改善に継続して取り組み成果をあげており、外部機関から極めて高い評価を受けています。昨年行われました、大変厳しい厚労省、県などによる共同指導でも称賛のお言葉を頂戴いたしました。昨年からは新病棟Ⅱ期工事が開始され、平成32年には新々病棟の開院に向け先進医療を含む高度医療をより一層推進して行きます。

       さて、皆さんご承知のように、2015年秋、本学、学芸学部、現教育学部卒業生である大村智先生のノーベル賞受賞に日本中が沸きました。大村先生が、イベルメクチンという寄生虫病の特効薬の発見で、日本人で3人目のノーベル医学?生理学賞を受賞されると云う吉報、近年厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報でありました。本学の教職員一同そして学生にとって大いなる誇りと励みになりました。
       これを機に、大村先生からノーベル賞の賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、優秀な入学生18名に対して給付型の奨学金を毎年授与しています。大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を附属図書館玄関ホールに設置、昨年10月には、医学部キャンパス内の臨床講義棟玄関ホールに先生が発見されたエバーメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。是非ご覧ください。
       このエバーメクチンは、少し改良されイベルメクチンとなり、アフリカなどで流行していたオンコセルカ症に絶大な効果があり、副作用も少なく耐性の出ない奇跡的な薬として数億人もの生命を救ってきました。
      そして、現在は大村智記念基金の一大事業であり、念願の150人収容できる記念ホールや展示コーナーを設けた大村智記念学術館の建設を進め、来る7月19日にはオープニングセレモニーで、大村先生と京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授との対談が決定しており、私が司会を務めさせて頂くことになっています。オープンを楽しみにしてください。
       記念学術館が本学のシンボルとなって永遠に大村先生を顕彰申し上げるとともに、学生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。
       大きな財産をお預かりした私どもは、山梨大学のますますの発展のために、今後とも精一杯努力して参る所存です。

       山梨県は風光明媚な地であり、厚生労働省の調査では、自立して日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」について、男性が全国第一位で女性は第三位に、また移住希望調査でも第二位に輝きました。皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で4年ないし6年学ぶことになります。本年度から学生サポートセンターを設置し、快適に修学生活を送れるように様々な相談支援体制を整えています。
       これからの一年間は、im体育官网で全学共通の科目を受講することになります。大村先生から頂戴した言葉のひとつ、「一期一会」の精神で、目標も考え方も異なる他学部の学生と積極的に交流を深め、心を開いて話り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ?読書?旅行?芸術など、皆さんの進む専門分野によっては直接関係のない分野にも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。

       大学院や特別専攻科に入学した皆さんは、更に高度な専門知識と国際的なコミュニケーション能力を身に付けて下さい。国際的な視野に立ち創造的な研究を推進する優れた研究者、高度な専門職業人として、社会の中核を担う人材に成長して頂きたいと願っています。

       今年も学部や大学院に世界11の国と地域から33名の留学生を迎えました。
       留学生の皆さんのために、ここから少し英語でスピーチします。

       To all the international students here today: we would like to welcome you to Yamanashi. You have come from all over the world, including Bangladesh, China, Indonesia, Malaysia, Mongolia, Nepal, Sri Lanka, Vietnam and Taiwan.
       It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       We will endeavour to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
       We hope that your stay at our university will be a successful one.
       Thank you.

       結びになりますが、本日、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、並びにご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       本日、山梨大学に入学された1,185名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、わたくしの式辞と致します。

  • 【2018年3月23日】平成29年度卒業式式辞

    •  本日、山梨大学の学部?専攻科?大学院の卒業式?修了式を迎えた1,101名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。
       また、この晴れの日を心待ちにしてこられたご両親をはじめ、ご家族の皆様方には、教職員一同心からお祝いを申し上げますとともに、これまでの厚いご支援に対し、心より御礼申し上げます。
       ご来賓の皆様には、ご多忙の折、ご臨席を賜り誠に有難うございます。
       今日の佳き日を迎え、夢を抱いて入学されてからの学生生活はあっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この間、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、幅広い教養とともに多くの知識や技術を修得され、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたものと思います。
       また、部活動やサークル活動を通じて尊敬する師や先生、先輩、同輩、後輩の皆さんなど様々な人たちとの出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、よき思い出をつくられたものと思います。

       皆さんが在学中の山梨大学での大きな出来事としては、本学、学芸学部、現教育学部卒業生である大村智先生が2015年ノーベル医学?生理学賞を受賞されたことです。
      この快挙は、近年厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報であり、山梨大学にとって大いなる誇りと励みになりました。
       大村先生からノーベル賞の賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、優秀な入学生18名に対して給付型の奨学金を毎年授与して3年目となります。大村先生には、本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたほか、先生の胸像を附属図書館玄関ホールに設置、昨年10月には、医学部キャンパス内の臨床講義棟玄関ホールに先生が発見されたエバーメクチンの分子化学構造を立体的に再現したモニュメント「Forever and ever」(=未来永劫)を設置しました。
       このエバーメクチンは、少し改良されイベルメクチンとなり、アフリカなどで流行していたオンコセルカ症に絶大な効果があり、副作用も少なく耐性の出ない奇跡的な薬として数億人の人達の生命を救ってきました。現在は、大村智記念基金の一大事業である念願の大村智記念学術館の建設を進め、来る7月19日にはオープニングセレモニーで、大村先生と京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授との対談が決定しており、私が司会を務めさせて頂くことになっています。記念学術館が本学のシンボルとなって永遠に大村先生を顕彰申し上げるとともに、学生?同窓生の皆さんや地域の皆様に愛される建物として有効に利活用されるよう願っております。
       大きな財産をお預かりした私どもは、山梨大学のますますの発展のために、今後とも精一杯努力してまいる所存です。

       先のピョンチャンオリンピックで日本は、冬季五輪史上最多記録を更新する15個のメダルを獲得しました。なかでもフィギュアスケート男子金メダリストの羽生結弦さんは右足に重傷を負いながらも66年ぶりの五輪連覇を達成し、多くの国民に深い感動と勇気、明るい希望を与えてくれました。どんな困難な状況にあっても希望を失わず努力すれば必ず報われる、羽生さんはそのことを改めて鮮烈に私たちに示してくれたように思います。
      さらに、金メダルをとるために、たとえ失敗しても取り返すプログラムを何通りも自身で綿密に計算され、考えられていたようです。実際に失敗もあったそうですが、すぐにプログラム変更をして乗り越えられました。
       また、スピードスケートでも長野県相澤病院所属の小平奈緒さん、高木菜那さんの金メダル、パシュートの高木美帆、菜那姉妹や、佐藤綾乃さん、地元、富士急の菊池彩花さんの金メダルも感動的でした。銅メダルではありましたが、「そだねー」のカーリング女子は日本ならではの素晴らしいチームワークでした。
      更にスキージャンプの高梨沙羅さんも素晴らしい成果をあげられました。彼女がトレーニングを行っているスロベニアのリュブリャナ大学とは昨年大学間連携協定を結びましたが、スロベニアを訪問して印象的だったのは、高梨さんや団長の葛西紀明さんはスロベニアでは英雄であることでした。カナダで外国人コーチについて練習をする羽生さんや、オランダで練習し、フォームを変えて成功した小平さん、国外で活躍する葛西さんや高梨さんにしろ、やはり外国に出て行って自分を磨くことの重要性を示してくれているものと思います。皆さんも学ぶところが多かったのではないでしょうか?

       さて、現在の世界情勢を見渡してみますと、アメリカでは異形の大統領と言われるトランプ大統領の誕生により、TPP離脱、パリ協定からの離脱表明など、America firstの過激な政策が推進されています。ある意味トランプ大統領の過激政策のおかげでようやく北朝鮮問題が進展しようとしています。
       ただ、対話重視だったはずの外務大臣に相当するレックス?ティラーソン国務長官を解任し、韓国の文在寅大統領の仲介で、北朝鮮金正恩委員長と対話を進めようとしています。核?ミサイル開発の完全放棄、日本にとっては拉致被害者の帰国がMustの条件ですが、これを検証可能、不可逆的なものにする方策が求められています。何度も約束を反故にされているので、ここはしっかりとした核?ミサイル廃棄プログラムが必要です。また、わが国の安全保障上の観点から、独裁色を強める中国やロシアも脅威です。

        翻って日本をみますと、バブル崩壊以来失われた20年のデフレが2012年安倍晋三首相誕生、黒田東彦日銀総裁の超低金利政策を含むアベノミクスで景気が回復基調にあり、円安、株高となり、失業率が低下、雇用が増加し皆さんにとっては売り手市場です。
       ただ、1,000兆円の借金があり、国の財政状況が厳しいとの理由で文部科学省の予算が財務省により削られ、特に国立大学の教育、研究の根幹である運営費交付金が削減され続けています。国立大学全体で毎年1%削減が続いたので2004年から14年で、1兆1千億円から1兆円、山梨大学で100億から90億円となっています。その後も実質減り続けています。
       人件費削減のため、退職教員の不補充や人事院勧告の凍結などで、しのいでいますが、このままでは教育?研究力の低下は避けられません。山梨大学だけでなく、日本の科学研究力の低下は目を覆うばかりです。主な先進国で低下している国は日本だけです。
       Times Higher Educationという国際評価でも、東京大学は不動のアジアNo.1の順位から現在7位にまで順位を下げました。この財務省/文部科学省の国立大学予算削減の政策は本当に正しいものでしょうか?

       昨今の森友学園問題にみられますように財務省は必ずしも正しい政策を打ち出すとは限りません。厳しい財務状況というのも経済学者によっては誤りで、財政再建は既に終了しているという意見もあります。財務省という、官庁のなかでもトップ中のトップの人々が集まる役所でさえ、このような有様です。
       私も山梨大学学長としてこの緊縮政策の誤りを、国立大学協会や日本経済新聞などで一年あまり訴え続けています。本学は教職員のがんばりで何とか教育?研究力を維持していますが、今後は予断を許さない状況です。
       皆さんは、こうした内憂外患のなか、船出していくことになりますが、どうか自分を信じ、勇気をもって自分なりの人生を紡ぐために漕ぎ出してください。個人としての幸せを追及することはもちろんですが、同時に、高等教育を受けた者として、社会をよりよくするという使命感をもって生きていただきたいと思います。われわれ山梨大学も逆風の中、皆さんの母校、港としていつでも適切な支援と生涯学習の場を提供できるよう、教職員一同力を合わせて進んでいきたいと思っています。

       ところで、今年も卒業生のなかに世界7か国から来られた23名の留学生がいます。言葉はもちろんのこと、文化や習慣など、様々な面で大きく異なる環境下で修学することは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日を迎えられた皆さんを称え、ここから英語でスピーチします。

       Among today’s graduates are 23 international students from 7 different countries.
       You have made it to this day after studying hard, and overcoming the difference of languages, lifestyle and food here in Japan.
      I congratulate you on your great efforts, and I wish you every success in your future endeavours.
       I hope that you will look back on time you had here in Yamanashi with fondness, and treasure the memories of the people you met and the things you learned at our university.
       Thank you.

       最後に皆さんが自分の人生は自分がつくるという自覚を持って、地域のため、日本のため、そして世界のために活躍されることを心より祈念し、わたくしの式辞と致します。

  • 【2017年4月6日】平成29年度入学式式辞

    •  満開の桜が甲府盆地を美しく彩るこの佳き日に、山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,204名の学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。また、ご列席頂きましたご家族の皆さま方に心からお祝い申し上げます。

       これから入学生の皆さんが学ぶことになる山梨大学は、2002年に旧山梨大学と旧山梨医科大学が統合して誕生しました。旧山梨大学は、江戸時代1796年に幕府の学問所であった昌平校の分校として「徽典館」という名称で開講した歴史があります。その後、師範学校を経て、現在の教育学部となり、1949年に工学部が加わり、旧山梨大学となりました。
       旧山梨医科大学は、国が設立する最後の医科大学として開学しました。2002年の統合後、2004年 国立大学法人山梨大学となり、以来本学は組織改革を継続的に行い、2012年には全国に先駆けて学部の改革再編を進め、生命?食?環境?経営などの諸問題に取り組み、解決する人材を育てる「理」?「文」融合型の「生命環境学部」を新設しました。また、昨年4月からは大学院組織の改編により、医学?工学?農学等が融合した「大学院医工農学総合教育部」が開設され、以前にもまして幅広く、より体系的で充実した教育研究を行うことが出来るようになりました。男女共同参画学長行動宣言を出し、理事、監事に女性を1名ずつ登用、さらに医学部臨床系で初めて女性教授も誕生しました。井上克枝先生は、全国ソロプチミスト女性研究者賞にも選ばれています。

       本学のキャッチフレーズは「地域の中核、世界の人材」であります。その重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二は、すぐれた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界で活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
       この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究を進めています。ナノテクノロジー燃料電池研究の世界的拠点である燃料電池ナノ材料研究センターや、クリーンエネルギー研究センター、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、各々大きな成果を挙げています。また、医学系を中心として、融合研究臨床応用推進センターを創設し、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。これらの優れた山梨大学の研究は「Nature」という世界No.1の超一流誌に紹介されました。更に医学部では、先端的教育システムとして「リエゾンアカデミー?ライフサイエンス特進コース」という一年生から高度な研究を開始できるシステムを構築しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞ほか、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。工学部ではアクティブラーニング、テニュアトラック制度をいち早く取り入れ、教育研究面で大きな成果をあげています。

       また、医学部附属病院は、特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、日本医療機能評価機構から極めて高い評価を受けています。
       一昨年6月には新病棟が完成し、昨年1月には天上吊り下げ型MRI装置、ハイブリッド手術室、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」など高機能の手術設備や、広くて清潔、居心地の良い患者のニーズに応えた病棟が稼働開始しています。医療安全対策、感染対策も万全であり、全国でも屈指の高度な医療を提供する病院であります。

       さて、一昨年秋、山梨大学に大変素晴らしい、嬉しいニュースが届きました。本学ご出身の大村智先生のノーベル賞受賞決定のお知らせでした。1958年、本学教育学部の前身である学芸学部を卒業された大村智先生が、イベルメクチンという寄生虫病の特効薬の発見で、日本人で3人目のノーベル医学?生理学賞を受賞されると云う吉報、現在、厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報でありました。教職員一同そして学生にとって大いなる誇りと励みになりました。
       このご受賞を機に、山梨大学として大村先生に敬意を表し、一昨年、10月『山梨大学特別栄誉博士』の称号を贈呈させて頂きました。また、ご受賞をきっかけとした本学の取り組みとして、大村先生に継ぐ次世代の若手研究者の育成を推進するとともに、末永く先生のご功績を顕彰するため、昨年度、山梨大学大村智記念基金を設立し、早速新入生18名に奨学金を給付いたしました。また、図書館にも石黒光二氏作の、先生の立派な胸像が設置してあります。外からもご覧いただけるよう、工夫しています。

       山梨県は風光明媚な地であり、移住希望調査では、全国第一位に輝きました。皆さんは、このような素晴らしい環境の山梨県で4年ないし6年学ぶことになります。
       これからの一年間は、im体育官网で全学共通の科目を受講することになります。大村先生から頂戴した言葉のひとつ「一期一会」の精神で、目標も考え方も異なる他学部の学生と積極的に交流を深め、心を開いて語り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ?読書?旅行?芸術など、皆さんの進む専門分野によっては直接関係のない分野にも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。
       大学院や特別専攻科に入学した皆さんは、更に高度な専門知識と国際的なコミュニケーション能力を身に付けて下さい。国際的な視野に立ち創造的な研究を推進する優れた研究者、高度な専門職業人として、社会の中核を担う人材に成長して頂きたいと願っています。

       今年も学部や大学院に世界10ヶ国から43名の留学生を迎えました。
       留学生の皆さんのために、ここから少し英語でスピーチします。

       To all the international students here today, we would like to welcome you to Yamanashi. You have come from all over the world, including Bangladesh, Brazil, China, India, Indonesia, Malaysia, Nepal, Pakistan, Republick of Korea and Vietnam.
       It is our great pleasure to have you here. We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       We will endeavour to do our very best to facilitate your educational needs, and help with your career development.
       We hope that your stay at our university will be a successful one.
       Thank you.

       最後になりますが、本日、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、地域の皆様方、またご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       本日、山梨大学に入学された1,204名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、式辞とさせて頂きます。

  • 【2017年3月23日】平成28年度卒業式式辞

    •  本日、山梨大学の学部?専攻科?大学院の卒業式?修了式を迎えた1,107名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
       また、この晴れの日を心待ちにしてこられたご両親をはじめ、ご家族の皆様方には、教職員一同心からお祝いを申し上げます。
       後藤知事をはじめとするご来賓の皆様、並びに地域の皆様方にはご多忙の折、ご臨席を賜り誠に有難うございます。

       今日の佳き日を迎え、夢を抱いて入学されてからの学生生活はあっという間に過ぎ去ったと感じている人が多いのではないかと思います。この間、皆さんは、日々学問の研鑚を通じ、多くの知識や論理力、実験のスキルや医療技術を修得、様々な苦難を乗り越えながら、大きく成長されたものと思います。また、部活動やサークル活動を通じて尊敬する師や先生、先輩、同輩、後輩など様々な出会いがあり、かけがえのない友人を得て友情を育み、様々なよき思い出をつくられたものと思います。
       皆さんが在学中、山梨大学での大きな出来事としては、本学、学芸学部、現教育学部卒業生である大村智先生が2015年ノーベル医学?生理学賞を受賞されたことです。あらゆる面で山梨大学は大いに沸きました。大村先生からノーベル賞の賞金の一部をご寄附いただき、これをもとに山梨大学大村智記念基金を創設し、優秀な入学生18名に対して給付型の奨学金の授与を行いました。先生に本学では初めてとなる特別栄誉博士号をお贈りしたり、先生の胸像を図書館玄関ホールに設置、外からでもご覧いただけるように配慮してあります。今後はご寄附いただいた記念基金をもとに大村記念ホールの建設を進めていきたいと考えています。

       さて、現在、世界情勢を眺めてみますと激動の真只中にあります。アメリカでは昨年11月泡沫候補といわれていたドナルド?トランプ氏が大統領に当選、世界を驚かせました。メキシコ国境の壁建設、TPPの離脱などかつてのアメリカでは考えられなかったような過激な保護主義政策がAmerica first,make America great againの標語のもと推進されています。アメリカ以外の国々にとっては不安視される政策ではありますが、アメリカ国内では意外なことに支持率も約半数あり、株価も最高値を更新しています。ヨーロッパでもBrexitという英国がEUを離脱する事態となり、やはり移民問題を契機にフランス、ドイツなどでは極右政党が躍進しており、本年の選挙結果が懸念されるところです。先週行われたオランダの選挙では、極右政党の躍進は一応止められ、世界は一安心しているところです。一方、アジアでは、中国のアジア海洋進出が懸念され、特に北朝鮮の核開発、ミサイル問題は身近に迫った我が国の危機となっています。

       我が国では安倍首相がトランプ大統領といち早く会談を行ったり、積極的平和主義を掲げ、諸外国と連携し、これらの危機に備えるとともにアベノミクスの成功により20年間デフレ状態にあった景気が緩やかに回復しつつあります。第1の矢である金融改革、第2の矢である財政政策に一定の成功は収めましたが、構造改革、イノベーションを含む第3の矢である成長戦略はまだまだ道半ばです。
       現在、世界では第4次産業革命が急速に進んでいます。これはいわゆる超スマート社会を目指したものでCAMBRICS、すなわちCは、クラウドコンピューティング、AはAI、Mはmobile、Bはbig data、Rはrobotics、IはInternet of Things、CSはciber securityです。この急激な進歩に関しては日本は残念ながら米国に比べて周回遅れ以上です。皆さんはこの混沌とした、しかも猛スピードで進んでいく世界の荒波のなかに船出していくことになります。どうか自分を信じ、勇気をもって自分なりの人生ストーリーを紡ぐために漕ぎ出してください。われわれ山梨大学は皆さんの母校、港としていつでも適切な支援と生涯学習の場を提供できるよう、教職員一同力を合わせて皆さんと進んでいきたいと思っています。

       ところで今年も卒業生のなかに世界各地の6か国から44名の留学生がいます。留学生の皆さんのためにここから英語でスピーチします。

       Among today’s graduates are 44 international students from 6 different countries.
       You have made it to this day after studying hard, and overcoming the differences in language, lifestyle and food here in Japan.
       I congratulate you on your great efforts, and I wish you every success in your future endeavours.
       I hope that you will look back on the time you had here in Yamanashi with fondness, and treasure the memories of the people you met and the things you learned at our university.
       Thank you.

       最後になりましたが、大村先生の「腹中有書」にも書き留められた言葉「幸運は高い志を好む」を皆さんに贈りたいと思います。高い志をもって努力し続ければ必ず幸運は向こうからやってくる、ということです。皆さんの健闘を祈り、わたくしの式辞と致します。

  • 【2017年1月4日】平成29年年頭挨拶

    •  新年あけましておめでとうございます。  皆様におかれては、お健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。 十干十二支(じっかんじゅうにし)によれば、今年は「丁酉(ひのととり)」の年です。十干は草木の成長に例えられ、丁(ひのと)は草木の形が充実した伸び盛りの状態で、十二支の酉(とり)は、草木の果実が成熟しきった状態を表していると言われています。本学もそのように成長したいと思っておりますが、実は前途多難です。

       一方で酉年は、革命の年とも言われています。2017年、世界情勢は混沌としており、危機的な状況となる可能性は大いにあります。先ず、アメリカですが、昨年11月、アメリカ大統領選挙が行われ、ドナルド?トランプ氏が次期大統領に選出されたニュースが世界中を驚かせました。”Make America great again”というメッセージとともにアメリカ第一主義を掲げるトランプ氏の動向は最も注視しなければなりません。
       1月20日、トランプ氏の大統領就任式は、イスラム、ヒスパニック、女性などに対する差別発言を行った大統領に対する大規模デモが予想され、多難な船出となります。クリミア半島侵攻やアレッポを制圧したシリア政府軍の後ろ盾となった拡張主義をめざすロシア、またEU離脱を決めた内向きのイギリス、フランスでは春に大統領選挙をひかえ、極右政党のルペン党首の選出が危惧されています。秋には、ドイツの総選挙ですが大量の難民を容認したメルケル首相が4選されるかは予断を許しません。アジアにおいては中国による南シナ海への海洋進出、軍事施設の建設や沖縄諸島への空母の航行、尖閣諸島の領有権を巡る問題など、大国の様々な動きの中、日本の安倍首相はオバマ大統領(真珠湾)をはじめ、トランプ次期大統領、プーチン大統領、習近平主席などと積極的な外交を展開しており、一定の成果はあげています。   

       また、ミャンマー、フィリピン、ウクライナなど新興国に対する1兆円以上の手厚い財政的支援を行っています。あたかも富裕な国家の如くです。しかしながら、我々にとって最大の問題は、国立大学に対して、財務省が文科省を通じて厳しい目を注ぎ、1000兆円の財政赤字を理由にすでに10年間10%削減を行い、これが主たる原因で、すべての国立大学では財政的環境好転の見通しが立ちません。今年度及び次年度はわれわれの努力で運営費交付金の1%削減を止めることができたものの、この大変厳しい状況は本学も当然例外ではなく、特に人件費増大を中心とする来年度予算は約2億円の赤字となります。この困難な状況について、これまでに各学域に出向きご説明をし、ご不明な点に対しては一つずつ真摯にご回答し、ご相談をしながら打開の道を探っているところであります。
       各学域からは一様に「この厳しい状況はいつまで続くのか」と問われるのですが、国の施策が不透明な中にあり、明るい返答ができずにいることを心苦しくも感じております。言うまでもなく大学の使命の第一は研究、教育であります。加えて、地域への貢献も求められており、昨年はCOC事業及びCOC+事業に積極的に取り組むとともに、男女共同参画の加速を一層促進するため、理事及び監事に女性を登用、大村智先生のノーベル賞受賞を機に胸像の設置や、大村智記念基金奨学金授与なども行いました。Nature誌に本学の記事が掲載されましたことは特筆すべきかと思います。

       アメリカ第35代大統領 故ジョン?F?ケネディ氏が1961年に行った就任演説の中に、「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country(国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために何を成すことができるのかを問うて欲しい。)」という名言がありますように、今、私はこれを「Ask not what your university can do for you, ask what you can do for your university」と言い換え、何とかこの難局を皆さんお一人おひとりの力をお借りし、ご理解を得ながら全学一丸となって乗り切り、将来を見据えた大学運営に努めて参りたいと思っております。

       この新しい年がより充実した年になるよう心より祈念いたしまして、私からの年頭の挨拶とさせていただきます。
       本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

  • 【2016年4月6日】平成28年度入学式式辞

    •  本日、山梨大学の学部?大学院及び特別専攻科に入学された1,216名の学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。山梨大学の教職員?在学生一同、皆さんを心から歓迎致します。また、ご臨席頂きましたご家族の皆さま方に心からお祝い申し上げます。

       これから入学生の皆さんが学ぶことになる山梨大学は、2002年に旧山梨大学と旧山梨医科大学が統合して誕生しました。旧山梨大学は、江戸時代1795年に幕府の学問所であった昌平校の分校として「徽典館」という名称で開講した歴史があります。その後、師範学校を経て、現在の教育学部となり、1949年に工学部が加わり、旧山梨大学となりました。
       旧山梨医科大学は、国が設立する最後の医科大学として開学しました。2002年の統合後、2004年国立大学法人山梨大学となり、以来本学は組織改革を継続的に行い、2012年には全国に先駆けて学部の改革再編を進め、「生命環境学部」を新設しました。また、本年4月からは大学院組織の改編により、医学?工学?農学等が融合した「大学院医工農学総合教育部」が開設され、以前にもまして幅広く、より体系的で充実した教育研究を行うことが出来るようになりました。

       本学の重要な使命の第一は、先端的な研究を推進することにより、世界の科学技術の発展に寄与することです。第二はすぐれた教育による人材育成であります。地域の発展に寄与するだけでなく、世界で活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
       この使命を果たすべく、本学では様々な分野で意欲的に研究を進めています。ナノテクノロジー研究の世界的拠点を目指している燃料電池ナノ材料研究センターや、先端的ライフサイエンス研究を推進している発生工学研究センター、我が国唯一の国立大学ワイン科学研究センターなど、各々大きな成果を挙げています。また、医学系を中心として、融合研究臨床応用推進センターを創設し、神経科学、免疫学、腫瘍学の分野で最先端の研究を行っています。更に医学部では、先端的教育システムとして「リエゾンアカデミー?ライフサイエンス特進コース」という1年生から高度な研究を開始できるシステムを構築しています。このコースを受講した学生は、文部科学大臣賞他、数々の賞を受賞するなど高い評価を受けています。
       また、医学部附属病院は、特定機能病院として高度で安全な医療を実施し、日本医療機能評価機構から極めて高い評価を受けています。昨年6月には新病棟が完成し、今年1月には高機能の手術設備や患者のニーズに応えた病棟が稼働開始しています。

       昨年秋、山梨大学に大変素晴らしい、嬉しいニュースが届きました。
       本学ご出身の大村智先生のノーベル賞受賞決定のお知らせでした。1958年、本学教育学部の前身である学芸学部を卒業された大村智先生が、イベルメクチンという寄生虫病の特効薬の発見で、日本人で3人目のノーベル医学?生理学賞を受賞されると云う吉報、現在、厳しい環境におかれている地方国立大学にとってこの上ない朗報でありました。教職員一同そして学生にとって大いなる誇りと励みになりました。
       このご受賞を機に、山梨大学として大村先生に敬意を表し、昨年10月『山梨大学特別栄誉博士』の称号を贈呈させて頂きました。私も大村先生と何度か対談させて頂く中で、たくさんの力強い言葉を頂戴しました。是非、皆さんにもお伝えしておきたいと考えています。「一期一会」、「至誠惻怛」、「恕」と云う言葉であります。
       「一期一会」は人と人との出会いを大切にすること、「至誠惻怛」は誠心誠意、相手のことを考えながら思いやりをもって取り組むこと。又、「恕」は思いやり、寛容の精神であります。これらの言葉とは別に「人と違うことをやれ」ということも、よくおっしゃいます。人と違うことをすれば失敗も多いが、失敗を恐れずチャレンジしてほしいということです。また、ご受賞をきっかけとした本学の取り組みとして、大村先生に継ぐ次世代の若手研究者の育成を推進するとともに、末永く先生のご功績を顕彰するため、今年度から新たに山梨大学大村智記念基金を設立し、新入生15名に奨学金を給付いたします。

       さて、教育に関しましては、本学はアクティブラーニング等、創造性を磨くことの出来る学習環境と多彩なカリキュラムを用意し、皆さんの教育に情熱を持って取り組んで参ります。
       本日入学した皆さんは、学部にとらわれず、これからの一年間、im体育官网で全学共通の科目を受講することになります。目標も考え方も異なる他学部の学生と積極的に交流を深め、心を開いて話り合える友人をたくさん作って欲しいと思います。更に、スポーツ?読書?旅行?芸術など、皆さんの進む専門分野によっては直接関係のない分野にも興味をもって、教養を深め、人間としての豊かさを培って頂きたいと思います。
       大学院や特別専攻科に入学した皆さんは、更に高度な専門知識と国際的なコミュニケーション能力を身に付けて下さい。国際的な視野に立ち創造的な研究を推進する優れた研究者、高度な専門職業人として、社会の中核を担う人材に成長して頂きたいと願っています。

       今年も学部や大学院に世界11ヶ国から41名の留学生を迎えました。
       留学生の皆さんのために、ここから少し英語でスピーチします。

       To all the foreign students here today, we would like to welcome all of you who have come from all over the world includingChina, Egypt, Republic of Guatemala, Indonesia, Republic of Kenya, Malaysia, Nepal, Republic of Korea, Sri Lanka, Thailand and Viet Nam.
       It is our great pleasure to have you here.
       We sincerely hope that you will enjoy campus life here in beautiful Yamanashi.
       We will do our very best to help with your career development.
       We wish your stay in our university will be a successful one.
       Thank you.

       最後になりますが、本日、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、地域の皆様方、またご家族の皆様方には、入学生の皆さんを今後共あたたかく見守って頂きますように、また、本学へも引き続きご支援賜りますように、お願い申し上げます。
       本日、山梨大学に入学された1,216名の皆さんとそのご家族の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、式辞とさせて頂きます。

  • 【2011年5月】山梨大学医学部附属病院南三陸町医療救護班派遣「完結」に寄せて
    ※当時附属病院長

    •  この度、3月18日に第1班派遣で開始した、宮城県南三陸町医療支援チーム派遣を5月13日第19班(2回の病院長班、理事班を含めると22班)をもって無事終了することができました。山梨県をはじめ、このプロジェクトを支えてくださったすべての方々に感謝したいと思います。

       思い起こせば3月17日、山梨県から救急部松田兼一教授へ宮城県の被災地医療支援の依頼がありました。地震?津波による未曾有の甚大なる被災地の状況をみて、我々も何らかの支援をしたいと考えていた矢先でしたので、すぐに派遣を決めました。救急部の松田教授、森口武史講師が非常に積極的でしたので、その日の内にチームを編成し、翌18日午前10時に出発することができました。宮城県庁に到着すると我々の行き先は南三陸町とのことでした。もっとも被害の甚大であった地域を支援することになり、森口講師をはじめチームの士気が上がったと聞いています。森口講師は南三陸町の医療統括責任者である西澤匤史医師に対して災害医療診療についていろいろとアドバイスを行ったそうです。西澤医師は一般内科医なので災害医療には経験がなく、このアドバイスが極めて適切でその後の医療体制構築に有益であったと述懐されていました。

       派遣中の第1班メンバー鈴木正彦副薬剤部長から、途切れ途切れの連絡(当時は携帯電話も通じませんでした)があり、薬剤不足が深刻で、さらに薬剤整理が全くなされていないとの報告がありました。このことは第2班、花輪剛久准教授に引き継がれ、不足薬剤を補充し整理棚なども持ち込んで医療統括本部の薬局の立ち上げに成功しました。

       また同時にPCを含めた事務機能の必要性が伝達され、早速PC、プリンターを用意して齊藤敦係長、細田浩司係長の両事務員が派遣されました。彼らのすばらしい働きにより西澤医師は本部の事務機能は山梨大学事務員に任せることに決めたそうです。事務関係は第3班植村健係長、松下雄一郎主任、第4班の高山俊雄補佐、塩島正弘係長へと引き継がれ、確固としたものになり、以後、災害本部の事務は山梨大学事務員が担いました。西澤医師も折にふれ、本学事務員の大活躍に感謝されていました。

       また第4班からは医療班の拠点が歌津地区に決定し、支援の終了まで歌津中学校で奈良県医師会チームとともに歌津地域の診療を担当しました。医師、ナース、コ?メディカルのチームはそれぞれの専門を生かして多大な貢献をしました。

       歌津中学校の両区長さん、及川保健師さんも私が病院長班として訪問したときに目に涙を浮かべて感謝して下さいました。避難所ではノロなどの感染症の発生も、金丸明美副看護師長、三枝栄江副看護師長、古屋塩美看護師長?GRMをはじめとする看護師の活躍により、他地区では流行した折にも最小限に抑えられました。

       これらの貢献が評価され、本部のたっての要請を受け、当初4月末?第14班までの支援終了予定を、5月13日?第19班まで支援を延長することとなりました。

       本部の南三陸町医療を自立させたいとの意向もあり、5月からは撤収を視野に入れての医療支援となりましたが、今般無事に終了することができました。

       特筆すべきは、天皇皇后両陛下が歌津中学校の避難所をご訪問された折、第14班の近藤尚己講師と新谷典生調理師が天皇陛下からお言葉をいただいたことでしょう。この場面がテレビ報道され、山梨大学のゼッケンを見て感動された方々も多いと思います。

       私自身も4月9日から10日まで、5月以降の医療支援継続決定をすべく、又、第5班リーダーの杉山剛助教から報告のあったイスラエルチーム(すべての主要診療科を備えた50名からなる海外からの最大医療支援チーム)と災害対策本部との摩擦を心配し、現地に赴きました。イスラエルチームのオフィル コーエン?マロム大佐(医師団長)、シャロム ベンアリエ准将(総指令官)をはじめ、多数の医師、スタッフの方々と握手して回り、日本支援の感謝の気持ちを伝えられたことは、対イスラエル外交に少しでも貢献できたものと確信しています。わが国も各国の善意を仇で返すようなシステムは即刻変更すべきと考えます。現在、南三陸町が曲がりなりにも自立して、仮設診療所を中心に医療を始められるのもイスラエルチームが残してくれた医療機器?検査機器等がベースになっているのです。

       また、今回、5月13日に撤収班として、佐藤仁町長、西澤医師に再会し、“言葉にあらわせないほどの感謝”をいただいたこと、さらに歌津地区の及川区長さん、歌津中学校の阿部校長先生、及川保健師たちからも心のこもった御礼の言葉を頂戴したことで、われわれの支援が“本物”であったと実感することができました。ことに歌津中学校避難所で区長さんからの急な要請でハンドマイクを持ってご挨拶したところ、大変心のこもった大きな拍手を避難所の方々全員からいただいたことは一生忘れられない思い出となりました。撤収班としてともに参加した松田教授、岩下直美副看護部長、白沢一男医学部事務部長、山田徹病院経営企画室長、佐藤康樹GL、松下主任にはこの貴重な体験をシェアできましたことに感謝致します。

       この南三陸町医療支援を大成功裡に終えられたのは派遣チームに参加された方々、また参加されなくても、大学にあって支援してくださった方々ともども本院の目標である“病院全体がひとつのチーム”として機能した賜物であり、改めて皆様に感謝申し上げます。

       最後に被災地の皆様に一日も早い復旧、復興の日が訪れますことをお祈りし、この稿をとじたいと思います。